M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

対振り右玉対策3 △13香△33桂の端攻め

以前投稿した「対振り右玉対策1△15角の検討」を補完する作戦。

mars2718.hateblo.jp

今回は右玉が端歩を受けてこない17歩型の場合に使える作戦を紹介します。

初手から▲26歩△34歩▲25歩△33角▲48銀△44歩▲36歩△32銀▲37桂△42飛▲46歩△43銀▲38金△62玉▲56歩△72玉▲68銀△14歩▲57銀△15歩▲47銀△13香▲48玉△12飛▲27金△32金▲58金△42角▲76歩△33桂▲26金△54歩▲29飛図1

 

 

図1:▲29飛を待つ

ざっと手順を書きましたが駒組みは適当でOKです。図1の後手陣に組むのが今回紹介する作戦です。△54歩は先手の▲29飛を待つ意味での完全な手待ちで、代えて△62銀でも問題ありません。先手は▲16歩を突かずに争点を下げて1筋を受けています。これは以前扱った△15歩▲同歩△15同角の変化を避ける意図です。

図1から△25桂図2

図2:△25桂の仕掛け

後手はこのタイミングで仕掛けます。桂の単跳ねに対し、先手は同金と同桂の2つの応手があります。順に見ていきます。

▲同金の進行

図2から▲同金△16歩▲同歩△18歩▲同香△16香図3▲13歩△18香成▲26飛△13飛▲14歩△12飛▲16飛△28成香▲13歩△15歩▲26飛△13飛▲28飛△24香図4

図3:△16香(後手良し)   図4:△24香

金の横利きがなくなるので後手は△16歩からの端攻めを実行できます。このとき先手の飛車が▲28飛だと△19香成と取った手が飛車に当たらないので△16歩▲同歩△同香▲13歩△同飛▲14歩と叩かれて後手不利となってしまいます。図1で先手の▲29飛を待つのはこのためです(まぁ▲29飛は右玉としても引いておかないと始まらない手なので、あまり後手としても待つようなものでもないかと思います。勝手に引いてくれるでしょう)。▲29飛に対し本譜のように△18歩と叩いてから香を走るのが手筋で、端に喰いついた図3は既に後手良しです。以下の手順は一例ですが図4まで進んで後手優勢がはっきりします。△24香で駒の損得はほぼなく、金香交換ののち後手には△16歩~△17歩成の明確な攻めがあるので実戦的にかなり形勢差がついているでしょう。

▲同桂の進行

再掲図2

図2から▲25同桂△14香▲59玉△24歩▲68玉図5△16歩▲同歩△18歩▲同香△25歩▲同金△16香図6

図5:▲68玉   図6:△16香(後手良し)

後手は一度△14香と逃げます。最初から△14香としない理由はあとで説明します。本譜先手は手数が少し空くのでこの間に玉を移住させるのが自然です(図5)。以下は前章の手順と同じように△18歩叩いてから△16香と走ります(図6)。前章よりも後手は少し手数が遅れているのですが、桂損せずに端を突破できるので形勢は後手良しです。

ただし先手が正確に指すなら最後▲25同金ではなく▲27金図7)と引いておいて一局の将棋です。△26桂の開戦権利があること、堅く美濃に囲えることから後手を持って不満のない展開といえるでしょう。

図7:▲27金(互角)

この作戦は相手がミスをすれば一気に形勢を持っていける展開でもあり、それでいて仮に正確に対応されても形勢互角以上に収まるという優秀な作戦だと思います。また再現性が高いのも大きなメリットです。作戦としていわゆる挙動が大きいのが唯一の弱点で、先手としてはあらかじめ居玉で構えておくなどの根本的な対策が存在します。あくまで 「右玉を」潰すという点にフォーカスした作戦だといえそうです。

 

最後に△14香型がダメな理由について。
この作戦の開発段階では△14香を検討していたのですが・・

上図から△25桂に、▲同桂ならいいものの▲同金の方に問題があります。
△25桂▲同金△16歩▲14金(下図)

このように金で香をちぎられるのが嫌な手です。以下は△同飛しかありませんが▲16歩(下図)と戻された局面は先手有利です。

では改めて、▲16歩△同歩▲25桂と先につき捨ててから攻めるのはどうでしょうか。

以下今度は▲同桂△24歩▲13桂成△同飛▲15歩(下図)先手優勢

見事に△16歩の突き捨てを逆用されてしまいます。
以上のような理由から、本譜手順のように後手は一旦△13香と上がり、△25桂に先手の▲同桂を見てから△14香と再度躱(かわ)すのが必須要件となります。

おわり