M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

宗歩流 解説

概要図

今回はオリジナルの右四間対策についてまとめます。

簡単に言うと「△52飛~△55歩として先手の腰掛け銀を押し戻してやろう」という構想です。上手くいけば持久戦において右四間の攻撃力を奪うことができます。

以前に開発記録を投稿しているので水面下の試行錯誤はそちらへ。

mars2718.hateblo.jp

ではさっそく具体的な手順を解説します。先に本筋を解説し、その後に枝葉の変化を見ていくことにします。

本筋

初手から▲76歩△34歩▲48銀△44歩▲46歩△42飛▲47銀△62玉▲56銀△72玉▲48飛△62銀▲68玉△74歩▲78玉△73銀図1▲58金△64銀▲77角△73桂▲88玉△54歩▲78金△32銀図2

図1:△73銀   図2:△32銀

図1および図2において先手が仕掛けてくる変化がありますが、これについては後述します。さて本譜、後手は△64銀~△73桂~△32銀の順番で駒組みを進めます。

図2から▲98香△52飛図3

図3:△52飛

後手も決断の一手です。図3には当然▲45歩の仕掛けが存在しますが、本筋では先手が持久戦を選択します。

図3から▲66歩△55歩▲67銀△43銀▲99玉△54銀▲36歩△42飛図4

図4:結果図(互角)

手順中、後手の△55歩に対し▲47銀と引かされるのでは悔しいので先手は▲66歩~▲67銀と引きます。図4:結果図はソフト評価値+350の局面ですが、この時点で後手は右四間の攻撃力を奪うことに成功しており先手にとって嫌な展開かと思います。

図4:結果図では後手が再度△42飛と戻したことで△45歩の攻めが生じています。ただし後手としてもすぐ行くのはまずく、図4からの失敗例は▲88銀△45歩▲同歩△同銀▲86角△43飛▲65歩△同銀▲44歩!先手優勢となります。したがって後手は事前に△62金や△52金を入れておいて△45歩を実行することになります。先手は▲37桂で△45歩攻めを消すことができますが、その場合▲37桂△35歩▲同歩△32飛▲47金△35飛▲36歩△31飛がやや嫌味。

後手の方針は多岐にわたり、△32金△62金△85歩△81飛、△62金△52金、△52金→△62金寄などが考えられます。いずれにしても「先手の堅さ vs 後手の主導権」という戦いになります。

 

図3以下▲45歩図5)の変化  

図5:▲45歩

vs右四間の実戦においてこの変化になった将棋は1割以下でした。先手としては後手の△55歩を許したくない反面、やはり後手の研究範囲を警戒するのが対局中の心理というものでしょうか。以下は局面が激しくなります。

図5から△55歩▲44歩△56歩▲43歩成△77角成▲同桂△43銀▲同飛成△42銀

▲52龍△同金▲22飛△54角図6)互角~後手指しやすい

▲47龍△57歩成▲同金△46歩図7)互角~後手指しやすい

図6:❶52龍の結果図    図7:❷47龍の結果図

手順中△42銀のところでは代えて△42歩も自然ですが、△42銀と投資しておくことで❶の変化で▲31飛の打ち込みを消せます。本譜▲22飛に代えて▲41飛の打ち込みには△51飛▲同飛△同銀で後手陣が堅くなります。

❷の▲47龍に代えて▲48龍なら△57歩成▲同金△56歩▲58金△57角で後手良し。また図7から▲46同龍は△24角で後手優勢。図7から▲48龍も△75歩▲66金△57角で後手良し。

 

図2以下▲45歩図8)の変化  

図8:▲45歩

実戦でこの変化になった将棋は4割ほどと多かったです。△32銀が隙に見えること、後手の囲いが薄いために行けると思うのでしょう。結論としては形勢互角になります。

図8から△43銀▲44歩△同角▲同角△同銀▲43歩※1△同飛▲22角△33角▲同角成△同桂▲22角※2△55歩

▲47銀△12香▲11角成△42飛図9)後手優勢

▲33角成△同飛▲44飛△42歩▲45銀△38角図10)後手良し

図9:❶の結果図(後手優勢)    図10:❷の結果図(後手良し)

※1. ▲43歩に代えて▲77角には△33角▲45歩△55銀▲同銀△同歩変化図a)後手良し

※2. ▲22角に代えて▲21角には△32角▲同角成△同金▲21角△41角▲32角成△同角▲31金△41角▲32金△同角変化図b)先手歩切れで後手満足

変化図a:▲77角の変化(後手良し)  変化図b:▲21角の変化(互角)



図1以下▲45歩図11)の変化  

図11:▲45歩

実戦でこの変化になったのは1割以下でした。右四間党はもとより急戦をする気はないのかもしれません。

図11から△同歩▲22角成△同銀▲45銀△33銀▲44歩△52金左▲65角△12角図12)一局の将棋

図12:△12角(一局の将棋)

先手から▲22角成と取る場合は後手に△33銀の受けが生まれます。△12角が有名な手で、一時的には狭くとも△23歩~△35歩が入ると△12角が強力に利いてきます。角の安定度でも▲65角より△12角の方が優れています。したがって先手は手を変えることにします。

図11から△45歩▲同銀△88角成▲同銀△65角図13

図13:△65角

先手としては後手から角交換させることで△33銀を回避したわけですが、この場合は後手としても△31銀と中央に近い位置で待機できているぶん積極的に捌き合いに持ち込めます。本譜の△65角以外としては△47歩▲同飛△28角も見えますがこれはダメで、▲44歩△19角成▲39金で馬が封印されて先手良しです。

図13から▲38角△同角成▲同金△65角▲47角※1△同角成▲同飛△65角▲56角△同角▲同歩△14角▲36角※2△同角▲同歩△64角▲55角※3△同角▲同歩△65角▲56角△同角▲同銀△47飛成▲同銀△49飛図14)後手指しやすい

図14:結果図(後手指しやすい)

角を打ちまくる変化になり後手が指しやすい形勢になります。以下、手順中のポイントを解説します。

※1 ▲47角に代えて▲44歩は△38角成▲同飛△33桂▲48飛△45桂▲同飛△54金で後手良し。

※2 ▲36角に代えて❶▲36歩は△33桂▲43歩△同飛▲44銀△46歩▲同飛△45歩▲33銀成△46歩▲43成銀△36角で後手良し。❷▲49飛には△33桂▲44銀△69角成▲同玉△45桂!▲同飛△54金▲69飛△44飛で後手良し(byソフト)。

※3 ▲55角に代えて▲37角は△46歩▲同角△45飛▲64角△47飛成▲73角成△同桂▲47金△28飛で後手優勢。

 

下記の変化はあまりやる人はいないと思うので余談ですが、図13から▲56歩△33桂▲77桂△45桂▲65桂△64銀図15)後手良し

図15:△65角に▲56歩の変化(後手良し)

角銀交換で後手は駒損ですが、結果図で▲65桂取りになっていることと次の△57桂成が厳しく後手が勝ちやすいでしょう。先手の▲56歩の余談でした。

 

図1以下▲58金△64銀▲45歩図16)の変化  

図16:▲45歩

この場合は後手は△47歩で反撃することになります。通常の四間飛車美濃では後手良しが定説ですが、今回は後手陣が薄いので注意が必要です。

図16から△同歩▲同銀△88角成▲同銀△47歩▲同飛△38角▲48飛△29角成▲44歩図17

図17:▲44歩

最後▲44歩に代えて▲43歩には△32飛と交わして後手良し。また▲43歩ではなく▲44銀には❶△52金▲43角△32桂 or 乱戦志向なら❷△19馬▲43銀△37馬▲42銀成△同銀が考えられます。

図17から△19馬▲34銀△37馬▲43歩成△48馬▲同金△62飛▲37角△51香図18)互角

図18:結果図(互角)

以上、全変化の研究手順でした。