M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

m式四間飛車 解説&見解

m式四間飛車は2020年2月に思いついた戦術で、もともと2019年後期に指していた宗歩四間飛車 (錆刀四間飛車) を改良できないかと考えたのが始まりでした。

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m式四間飛車(基本図)    宗歩四間飛車

宗歩四間は囲いが金一枚なのが地味に勝ちにくい要因でした。一応41金が守り駒として機能するとはいえ、いくら薄くてもカナ駒2枚は玉にくっつけておくのが最低限度でしょう。また宗歩四間の攻めに関しても、55歩から仕掛けるのは86角などの反動が大きくあまり好きではないので僕の場合は44銀右36歩35歩38飛36歩同飛43銀のように仕掛けていました。それならばわざわざ右銀を繰り出すのではなく左の金銀で同じ動きをできないかと試行錯誤をした結果、m式四間飛車に至ったという経緯です。

このm式についての初期の頃の見解と試行錯誤の記録はこのページで確認できるので、興味のある方はどうぞ。

mars2718.hateblo.jp

 

これを将棋クエスト2切れで10か月間使ってみました。その経験を踏まえて、このページでは改めて全変化に対する解説と見解を書いていこうと思います。

 

m式四間飛車は基本図以下、4つの基本ルートから成ります。

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43金ルート     35銀ルート     44銀右ルート     34銀ルート

角交換の有無・36歩の有無で4通りです。居飛車の陣形によって少しイレギュラーな展開も存在しますが、まずはこの4つの基本ルートについての解説から始めていきます。

 

43金ルート

基本図から▲66歩△44銀▲36歩△43金▲78銀△35歩▲38飛△34金!▲35歩△同銀

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43金ルートは実戦では一番多い展開で、結論からいうと実戦的にかなり勝ちやすい部類に入ると思います。一応、My定跡としては上図から36歩△26銀▲28飛△25金▲65歩△36金…

❶▲67金△27銀不成▲68飛△47金(互角)

❷▲59金△77角成▲同桂△39角▲38飛△57角成▲36飛△35銀▲38飛△36歩▲28飛△24歩(互角)

も想定していたのですが、そう進んだ実戦はほぼ皆無でした。相手としては36歩44銀と引かせた形でもあまり居飛車自身ないと判断しているのかもしれません。
一番多かった応手は上図から▲65歩△36歩▲55歩と進み・・・

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以下は先手から54歩△同歩▲33角成△同桂▲31角を目指してきたり、64歩同歩を入れてから54歩とされることも多かったです。ただ現実的には31角△32飛▲75角成には55角の両取りがありますし、▲64歩△同歩を入れようものなら31角△55角▲77桂△32飛で角が死ぬので、先手が綺麗に攻めるのは難しいという印象があります。上図からよくある進行は△52金▲56銀△24歩▲同歩△同金▲64歩△同歩▲54歩△同歩▲33角成△同桂▲31角△32飛▲64角成△53銀▲75角△22飛。類似局面の解説記事→ https://mars2718.hateblo.jp/entry/2021/05/06/200908

また後手には△24歩▲同歩△同金~△34金▲28飛△26歩の攻め筋が常にあるので動きやすく、格下戦では序盤でかなり形勢を持っていける傾向にありました。ちなみに上図からは△46歩▲同歩△同銀の攻めもあるにはありますが・・・

  1. ▲同銀△同飛▲47歩。
  2. ▲36飛△57銀成▲同金△35歩▲46飛△同飛▲同金△49飛▲41飛△52銀▲21飛成△46飛成▲23龍△43金。

いずれも劣勢ではありませんがいずれも後手もってそこまで自信がありません。それよりも前述の24歩と動く方が勝算があると思います。

またそもそも35歩38飛と進まずに35歩同歩と取ってこられることも多かったです。その場合は下図のように待って隙を見て46歩と動くしかないのかなと思います。24歩同歩同金34歩44角65歩25歩という強引な仕掛けも浮かびますが、玉頭戦に転換されることも考えると後手の2筋逆襲が間に合う未来は想像しにくいですね。

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また下図左のような38飛(35歩の阻止)は実戦では皆無でした。ソフトの推奨はこの38飛のようです。ちなみにこれについては初期のころは22飛37桂42飛~35歩を見せる指し方を予定していましたが、そこから研究に進展がありました。5筋を交換して対玉頭位取りのように54金型+木村美濃に構えるのが有力だと思います。38飛と指されることが皆無だったので実戦では試せていないですが、後手にも主張がある展開だと思います。

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あとちなみにですが、先手が角道を閉じなかった場合は下図のような局面も想定されます。 開始図からは▲38飛△34金▲35歩△同銀▲24歩△同歩▲33角成△同桂▲23角△52角▲34角成△同角(結果図

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開始図                  結果図

結果図から▲35飛には△44角の王手飛車があるので後手が次に▲36歩と押さえて後手優勢の流れです。手順中、▲23角に対して△52角がこの一手。この△52角に対して仮に▲32歩なら△41飛~△21飛▲34角成△同角▲42金△22飛が一例で後手良しです。

先手が88玉ではなく78玉の位置なら最後の王手飛車がないので先手の攻めが成立します。なのでその場合は以下の進行が予想されます。

▲24歩△同金▲33角成△同桂▲77角△32歩▲28飛△52角(途中図)▲88玉△41飛▲78金△46歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛(結果図)

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途中図        結果図

結果図は評価値+600だが人間的には良い勝負。※先手▲77角のところで▲66角なら△32歩▲28飛に△46歩が成立する。以下▲同歩△同銀▲43歩△同飛▲44歩△57銀不成▲43歩成△66銀は後手有利。また△52角のところでは△34角が自然だが、結果図以下▲47歩△36飛▲37歩△34飛の筋が消えてしまう欠点がある。ただし△34角の場合は△25金~△36金の選択肢もある。本譜▲24歩△同金に代えて▲24歩△同歩▲33角成△同桂▲23角△44飛▲66銀△54歩▲55歩↓

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評価値+200~300で互角だが、これは人間的には後手かなり勝ちにくい

▲32歩△27角▲39飛△25桂▲22角△12香▲31角成△44飛▲22馬△37歩▲48金△46歩▲同歩△同銀▲44馬△同金▲46銀△28角▲59飛△38歩成

▲47金△48と▲同金△46角成▲41飛△54角成(下図)

結果図は後手良し。飛車だけ渡しても先手に厳しい攻めがなく、後手のゆっくりした2,3,4筋抑え込みが間に合います。途中△27角に対し①▲37飛は△49角成~△36歩を見て後手良し。②▲28飛は△49角成~△39馬を見て後手良し。途中△37歩に①▲同桂△38歩▲29飛△37桂成はやや後手持ち。②▲44馬△同金は△28角の打ち込みが生じ後手優勢。

 

ただし実戦では居飛車党は▲57銀の形からはほとんどが▲88玉と寄るため、上記のような雁木▲78玉の展開は少ない傾向にありました。

35銀ルート

基本図から▲66歩△44銀▲67金△35銀▲68角△43金▲98香△54金▲99玉△82玉▲88銀△72金

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35銀ルートは実戦では比較的実現することが少ないルートでした。やはり居飛車としては35銀は許しがたいのかもしれません。研究手順としては上図から38飛△26銀▲36歩△27銀不成▲37飛△28銀不成▲27飛△19銀成▲37桂△44角で、先手としては次の△26香や△17角成が受けにくく後手良しの形勢です。ちなみに▲38飛△26銀▲28飛△35銀の千日手はあります。他に先手から積極的に動く手順としては上図から16歩△64歩▲36歩△同銀▲48銀△46歩▲同歩△45歩▲同歩△同銀が一例でこれも一局です。途中△46歩▲同歩△45歩に代えて単に44金と寄っておくのでもよいでしょう。上図までの駒組みの注意点としては54金は優先して早めに入れておくべきで、これを入れないと55歩△同角▲56銀△33角▲36歩△44銀▲24歩という仕掛けが生じて後手不満です。

 ちなみに宗歩四間飛車でも同じように右銀で35銀と出るのですが、実は個人的に宗歩四間が苦しいと思う理由の一つがこの35銀の形でした。定跡書には48飛24歩同歩22飛28飛24飛で後手有望と書かれていますが、68角として4筋を受けられた時が分かりませんでした。「左銀で35銀と出たい」というのがm式四間のコンセプトの一つでした。

 あとこれは大事なことなのですが、以前からこの35銀型では後手の囲いをどうするかという問題がありました。既に35銀の主張があるので中央寄りの囲いにする必要も特になく、できれば銀冠や穴熊などの堅い囲いにするのが理想でした。そのために一時期序盤に62銀を保留することでこの35銀ルートの時に美濃や穴熊に組もうとしていました。ところが困ったことに、62銀を保留すると下図の43金ルートのときに33角成△同桂▲31角△52飛▲35飛△同金▲43銀から張り付かれる手が実戦的に勝ちづらいことがわかりました。

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なので今現在の結論としては62銀を上がり、最初の図のように金美濃から木村美濃を目指すしかないと思っています。

 


44銀右ルート

基本図から▲33角成△同桂▲36歩△54歩▲78銀△41飛▲66歩△64角▲37角△同角成▲同桂△53銀▲77桂△62金▲65歩△44銀

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44銀右ルートは実戦では登場回数少なめのルートでした。勝率は普通です。形勢的に後手悪いことはないと思いますが、玉が薄く6筋の位も取られるためミスが出やすい2切れでは少し後手勝ちにくいかなぁと思います。2,3,4筋で優位を取るのはさほど難しくないのですが、そこから居飛車の囲いに手を付けて勝ち切るまでの道のりは非常に長いです。指し手の方向性は「囲いを保つ」のではなく「2,3筋方面で厚みを築いて玉を逃がす」という方向性になるかと思います。上図から具体的な手順は・・

  • ▲16歩△35歩▲26飛△36歩▲同飛△27角▲26飛△38角成▲48金△35銀 or 同馬▲同銀△35銀▲27飛△36歩 )
  • ▲48金△35歩▲26飛△53角
  • ▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛△21飛

いずれも後手が指せると思っています。

またそもそも上図に至るまでの手順中△64角(下図)の意味は、桂を釣り上げて35歩の仕掛けを作るためです。37角に代えて▲18飛なら△74歩~△24歩と攻めて後手満足です。実戦ではほぼ100%、▲37角でした。

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ちなみにこの△44銀右の形は「クラリスシステム」や「GAVA角」の一変化としても登場する形らしいです。△53角の筋とかは角交換雁木でも登場しますね。

 

 

34銀ルート

基本図から▲33角成△同桂▲78銀△35歩▲77桂△34銀

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34銀ルートは実戦では43金型に次いで二番目に多い展開でした。とはいっても43金ルートが体感では全体の7割を占めているのに対して二番目という感じです。勝率は普通・・・というか一局の将棋です。

上図以下の研究手順は24歩△同歩▲同飛△23銀▲28飛△44飛▲66歩△25歩(下図)を想定しています。通常の立石流と比較して2筋を詰めれる分だけ後手が得をしています。

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上図以下の一例は△24飛▲27歩△34銀~△43銀~△34飛~△3筋歩交換~△24飛~△21飛~△38歩▲同飛△26歩です。手数こそかかりますが後手から強力な攻撃手段が多くあります。

そして34銀ルートには上記に加えてもう一つの展開があります。

下左図のように早めに2筋を交換された場合は下左図から△34銀▲66歩△43金▲77桂△22飛▲67金△24歩▲26歩△52金▲16歩△42金引として次に△25歩から飛車逆襲を狙います。手順中52金の意味は25歩▲同歩△同銀▲23歩△同飛のときの最後▲32角を防ぐためです。▲16歩の意味は25歩▲同歩△同銀▲17桂△26銀▲23歩△同飛▲41角△22飛▲52角成△同飛▲26飛の狙いです。それに対して42金と引いてようやく後手は次に△25歩から攻めが成立するようです。by ソフト

ちなみに△52金~△42金引の代わりに△42金~△52金寄としたのでは25歩▲同歩△同銀▲15角△43金▲17桂△24歩▲25桂△同桂で後手失敗します。

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先に2筋交換した場合              結果図    

また、そもそも△43金~△22飛の代わりに△41飛~△21飛とする手もあります。大きな差はありませんが、△41飛~△21飛は▲76角のラインがキツイので先手の陣形に合わせて使い分けると良いと思います。

基本の4ルートの説明と見解は以上です。

 

 

特殊ルート

m式四間飛車には4つの基本ルートではカバーしきれない特殊ルートが3つあります。順番に見ていきます。

 

1つめ居飛車が△45歩に対して▲37桂と跳ねてくる場合です。この場合いつも通り△44銀~△43金とすると▲46歩がきついです。したがってこの場合、先手から▲37桂と跳ねてもらっているのを利用して△77角成▲同桂△33桂から44銀右ルートに合流するのが良いと思います。厳密には通常より後手一手遅れますが・・・

気にしない(`・ω・´)

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45歩に37桂跳ねてくる場合             結果図     

 

2つめは▲36歩だけ突いてくる場合です。この場合△44銀と出ると、3つめの展開で詳しく書きますが▲66銀~▲68角とされたとき少し損となります。下図左からは77角成▲同桂△33金▲66歩△44銀▲78銀△35歩(途中図)として43金ルートに合流して一局だと思います。

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36歩だけ突いてくる場合             途中図    

実はこの△33金と上がる手は基本ルートでもある手で、初期の頃は44銀右ルートや34銀ルートの▲33角成△同桂の代わりに▲33角成△同金とする案も有力視していました。しかし▲36歩を突いてくれない場合34金~△33桂~△25桂と調子よく跳ねれるのですが下図48金型に組まれて継続の攻めが難しく、実戦的に方向性が見えにくいためボツ案になりました。▲36歩を突いてくれたのを確認してからなら本譜のように△33金~△44銀~△35歩で問題ありません。

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33金~33桂~25桂の展開

 

3つめは基本図から▲78銀の場合です。今のところ思う後手の最善の手順からいうと以下44銀▲36歩△43金▲66銀△54歩▲68角△35歩▲同歩△32飛▲38飛△42角 一局ながら後手あまり自信がないというのが正直なところです。△45歩に居飛車が▲78銀ではなくすぐに▲66銀とするのは△64歩から普通の風車にして6筋の位が取りやすい形なので後手も不満はないでしょう。一例は▲66銀△64歩▲36歩△74歩▲37桂△54銀▲68角△41飛▲24歩△同歩▲同角△44角で普通の風車戦になり一局。また△45歩▲78銀△44銀に対してここで▲66銀には△35銀で後手持ちです。▲78銀△44銀▲36歩△43金とここまで決めさせてから▲66銀とあがる本譜の順が一番厄介で、以下△64歩から風車にするのは2筋の角交換と44銀型の相性が悪いので流石に無理。

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37歩のまま78銀の場合              結果図    

本譜手順中の▲66銀に対して△54歩ではなく35歩と行きたいところですが、38飛△34金▲55銀△36歩▲44銀△同金▲36飛(下図左)となりこれは後手やってられません。(▲55銀に△同銀は▲35歩が痛い)

しかし最善手順の途中△54歩の代わりに△32飛とする手はあり得ます。改めて書くと、▲78銀の局面以下44銀▲36歩△43金▲66銀△32飛▲68角△35歩▲同歩△同銀▲同角△66角▲同歩△35飛▲37歩△39角▲26飛△66角成▲77角(下図右)となり、これは難しい形勢だと思います。右下図以下は33馬▲同角成△同桂▲22角が自然な進行ですが、ここまで気持ちいい手順が続けば普通は後手が良くなりそうなものの、△43金と早囲いが微妙で対する先手も美濃なので、角銀を捌くというのは寧ろ後手あまり自信がないかもです。香取って▲86香が、玉のこめかみに効きそうですね(´゚д゚`)←

ただ先手も△35歩▲同歩△同銀に▲同角は勇気のいる手なので、度胸試しを仕掛けてみるのも、実戦ならではかもしれないですね。

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ダメな流れ           54歩の代わりに32飛の展開

 

以上、m式四間飛車の全ての変化の解説と、実戦を踏まえた見解でした。

 

全変化を見ていくとめっちゃ長いですね、このページ全体で文字数が6,109文字あるので、400字詰め原稿用紙16枚分ですね(笑)大会に向けて少し頑張ろうと思ってるので、今後は自戦記(棋譜検討)を書いていこうかなと思っています。