M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

対 中飛車左穴熊- 左玉による対策

今回は中飛車穴熊 対策としての「左玉」を考察します。もともとは県の強豪が指しているのを見たのが始まりです。※本記事は無ソフト研究ですので内容は厳密には間違いを含んでいます、ご了承ください。

初手から▲56歩△34歩▲58飛△44歩▲55歩△42銀▲76歩△43銀▲48銀△33角▲77角△22飛▲68玉△72銀▲78玉△74歩▲57銀△73銀▲66銀△64銀▲88玉△24歩▲98香△25歩▲56飛△42玉▲99玉△32玉▲88銀△51角▲79金△84角▲16歩△14歩▲59金△52金▲69金△73桂(基本図)

基本図

一般的に中飛車穴熊には①石田流もしくは②居飛車振り戻しが有名です。本作戦:左玉はそれらに代わる三番目の手段です。

基本図に至るまでは△42玉→△32玉と玉を移動させてから△51角と引きます。△84角に据えるのが良い位置で、39地点まで突き刺さっています。また注意点として▲16歩△14歩と端歩は受けるのが鉄則です。仮に▲15歩〜▲68角〜▲16飛を許すと先手からの端攻めが厳しくなり、かつ先手の飛車を広くしてしまうのがその理由です。同じく端攻めを警戒して△33桂は基本的に跳ねないことを推奨します。

後手の狙い

基本図から▲78金△65銀▲同銀△同桂▲68角△39角成(図1)、後手優勢

図1

後手の方針は単純明快で、△65銀から仕掛けます。本譜▲68角と引いた手に代えて▲66角も考えられますが、これには以下△45銀▲58飛△26歩(図2)、後手良し

図2

このようにシンプルな手順で一方的に攻めることができます。まとめると戦略目標は以下の2つ。

1. 66銀をどかして△39角成

2. 56飛を引かせて△26歩

基本図から▲78金に代えて、A.86角, B. 68角が考えられます。順に見ていきましょう。

 

A. 86角の場合

基本図から▲86角(図3)

図3

これに対して後手は一手42金と備えてから仕掛けます。図3から△42金上▲78金△65銀▲同銀△同桂▲66銀△45銀▲58飛△26歩(図4)

図4

部分的には一方的に2筋突破が約束されていますが、86角が△64歩を阻止しているため桂は見捨てることになります。図4から▲65銀△39角成▲46歩△49馬(図5)

図5

飛車を5筋から追って先手の攻め種を完封できれば後手のワンサイドゲームになります、したがって以下先手は攻め合ってきます。図5から▲45歩△58馬▲44歩△同銀▲45歩△55銀▲44桂△同銀▲同歩△27歩成(図6)、後手優勢

図6

途中▲44歩〜▲45歩の叩きが先手の手筋で一見危うく見えますが、ドサクサに紛れて55歩を取った手が非常に大きく図6では先手の継続がありません。入玉ルートが確立できており後手勝ちが濃厚でしょう。※追記2024/1/7:後日ソフトに聞いてみるとこの変化は△55銀に▲77角などで先手優勢らしいです...確かに。なので後手としては以下に記述する展開を選ぶべきかと。

蛇足になりますが戻って図4から▲65銀に△27歩成(図7)という選択も一応ありうるので書いておきます。

図7

以下▲46歩△同銀▲54歩△57銀成▲53歩成△同金▲同角成△同金右▲54歩△同銀▲同銀△同金▲66桂△58成銀▲54桂△53銀(図8)、後手優勢

図8

先手はもっと刺さる攻撃を繰り出さねばなりません。先手の改良手順、図7から▲66桂△38と▲46歩△同銀▲54歩△同歩▲同銀△57歩▲53歩(図9)

図9

切り合いは怖いですが以下△58歩成▲52歩成△同銀①▲42角成△同玉▲53金△同銀▲43金△31玉▲53銀成△29飛成-後手入玉可能、②▲53金△同銀▲同銀△同金▲同角成△29飛-後手入玉可能

後手がやはり良さそうです。ただ個人的にはこちらの変化より図5,6の変化(▲66桂打たれる前に△39角成侵入する変化)のようがシンプルでいいと思います。

 

B. 68角の場合

基本図から▲68角(図10)

図10

以下続いて△65銀▲同銀△同桂(図11)

図11

次▲66歩は△67銀or△57銀で後手良し。一方で68角型の狙いは24地点であり以下の変化が厄介です。図11から▲15歩△同歩▲26歩△同歩▲15香△同香▲24歩(図12)、先手優勢

図12

なんと▲24歩一本で後手丸潰れになります。次の▲23銀と▲26飛が受りません。

後手の過ちは▲26歩を△同歩と取ったことです。正しい手順は途中▲26歩に△57銀▲86角△26歩(図13)で、これなら後手良しとなります。

図13

戻って図11からの先手の他の手段、▲66銀(図14)について考えてみましょう。

図14

以下続いて△64歩▲15歩△同歩▲26歩△同歩▲65銀△同歩▲24桂△33玉▲26飛(図15)

図15

これも同様に24地点に駒を置かれる展開は後手が勝ちにくい流れとなります。一例として図15以下23歩だと、12歩同香同桂成同飛25香32銀(打or引)24歩22香23歩成同香24歩22歩23歩成同歩24香31桂23香成同桂24角で先手優勢。

後手はやはり途中▲26歩を△同歩と取ってはならず、代えて①△51角(図16)または②△35歩▲同角△45銀▲58飛△34銀引▲68角△26歩(図17)

図16

図17

いずれも後手良しの結果です。ちなみに②の順の△45銀は飛車を引かせる簡単な手ではあるのですが、68角型の場合すぐ46歩で捕まってしまう懸念があります。本譜のように事前に35歩と捨てておくことで銀が生還できるようになります。

ちなみにこのような24地点狙いを緩和する意味で、そもそも駒組段階で△31玉に置いておくのは考えられますが、その場合A.▲86角ラインに乗るのが懸念点です。ここら辺の最適化はまた別の機会に検討してみます。

 

まとめ

以上で一通りの変化はカバーできたかと思います。77角,86角,68角の形に対して十分対抗できそうというのが結論です。「左玉vs左玉」かつ「バランス型vs堅牢型」という特殊な戦型であり、また△84角△73桂△64銀➕△22飛という両面から攻める配置も極めて珍しい、独創性のある指し方だと思います。(考えた人すごい)