M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

ツノ銀中飛車-42角33桂の作戦

2024年1月1日正月、実家のこたつからお送りしております。今回はツノ銀中飛車の42角-33桂を軸にした作戦について考察します。

※本記事は無ソフト研究ですので内容は厳密には間違いを含んでいます、ご了承ください。

開始図

先手が穴熊を目指すなら開始図から▲98香△33桂▲99玉△62銀▲88銀△74歩▲79金△94歩(分岐図)

分岐図

後手が42角-33桂を優先するのが今回テーマの作戦です。ここから後手の狙いが明らかになります。

分岐図から▲66歩△55歩▲同歩※1△同飛▲67金※2△25飛(理想図)、後手指しやすい

理想図

このように先手の▲66歩にはその瞬間に△55歩が絶好となります。(※1.代えて67金には56歩同銀55歩65銀73銀〜64歩で銀を捕獲して後手優勢 ※2.代えて▲46銀△25飛▲26歩もありますが以下①△24飛→△45歩▲57銀△35歩や②△85飛と逃げるなどして後手持ち。)

理想図では次に▲25同飛△同桂〜△28飛で後手が一方的に桂香を取ったのち△37桂成→△47成桂の活用が約束されているため後手指しやすいでしょう。先手は▲21飛→▲11飛成で香を取れますが後手△51歩の底歩が堅いです。ちなみに理想図以下▲25飛△同桂▲27飛△24歩▲26歩には△37桂成①▲同飛△28飛,②▲同桂△39飛▲25歩△38飛成で後手良し。

 

先手が理想図を避けるために▲66歩を突かない場合を見てみましょう。まず分岐図から▲36歩で斜め棒銀を目指すのは△64角(図1)で角のラインが厳しく後手ペース。

図1⭕️

先手の本筋は分岐図から▲96歩△73桂(図2)

図2ー

後手は桂を跳ねて先手の66歩を催促します。これに対し▲66歩や▲59角なら先ほど同様に△55歩が成立します。図2から▲66歩△55歩▲同歩△同飛▲67金△95歩(図3)▲同歩△25飛▲同飛△同桂、後手良し

図3⭕️

ただし上記のように端を突き捨ててから飛車を捌くのが大事なポイントです。端の絡みがない状態で73桂を跳ねて55歩の理想図手順に入ってしまうと、55歩同歩同飛67金25飛同飛同桂86角(図4)→角交換→▲75歩同歩74歩がありこれは後手不満。

図4🔺

73桂跳ねるためには端歩をぶつけられる状態である必要があります。図3のように95歩同歩をいれておけば、86角→角交換→75歩同歩74歩に85桂→97歩と穴熊乱しつつ桂を捌けるため後手良しとなります。

 

戻って後手の73桂に対する先手66銀の展開を見ていましょう。図2から▲66銀(図5)

図5ー

以下続いて△64歩▲68角△65歩▲77銀△55歩▲同歩△同飛(図6)後手ペース

図6⭕️

後手は次に△25飛に加え△56歩→△45桂も見ておりこれは先手にとって58金型が祟っている展開です。ただし先手が仮に49金型(58歩🉑, 59金→69金🉑)であっても居飛穴66銀型vsツノ銀中飛車の将棋自体が、中飛車側が勝ちやすい印象があります。

 

以上の検討から、感覚的には後手は常に互角以上の戦いが期待できると思われます。

 

先手の対策

上記の内容でノーマル中飛車が復活してしまっては話がおかしいので、居飛車には何かしら対策が存在します。その対策というのが おそらく早期の66歩です。

開始図再掲

ここからすぐに▲66歩(図7)とするのが有効な対策です。

図7ー

後手が例えば△33桂▲65歩(図8)となって6筋の位を許してしまうと6筋の勢力負けが辛く、かつ5筋歩交換も不可になってしまいます。

図8❌

したがって後手は図7の時点で動く必要があります。

図7から△55歩▲同歩△同飛▲65歩△同飛▲78銀△33桂▲46歩(図9)△25飛▲同飛△同桂▲45歩、後手悪い

図9❌

部分的には後手のやることは理想図の手順と同じですが、本譜▲65歩〜▲46歩として左美濃+アクティブな形に持って行ったのが先手の主張です。結果として▲45歩の攻めが強烈であり、囲いの充実度の差も明らかなことから後手悪いと言わざるをえません。

また更に先手が対策するなら開始図よりさらに早く、図10のタイミングで▲66歩を突いてしまうのも有効です。

図10ー

以下△55歩▲同歩△同飛▲65歩△同飛▲56銀(図11)後手劣勢

図11❌

後手の駒組みの速度限界がここら辺です。ツノ銀は部分的に6手も手数を要する陣形なので、後手の42角-33桂が全く間に合っていません。

 

追記2024/1/2

居飛車にとって66歩が有効な対抗策ですが、中飛車にも対抗策はありそうです。図7や図10の▲66歩に対して△64歩(図12)と受けてしまうのがそれです。玉の小瓶も空き42角のラインも消えてしまうので当初は悲観していた手でした。

図12ー

以下続いて▲67金△82玉▲98香△72銀▲99玉△33桂▲88銀△55歩(図13)

図13ー

この場合は早囲いに代えて、堅く美濃に囲います。既に66歩を突かせており後手からの73桂(66歩催促)が不要なので早囲いでなくとも構いません。図13から▲55同歩△同飛▲79金△25飛(図14)これは後手良し

図14⭕️

理想図の手順で進めばやはり後手良し。

しかし後手にとって問題なのが、図13から▲55同歩に代えて▲65歩です。今までの理想図手順と違い先手の66歩〜67金が事前に整っているために生じた手です。以下は△45桂(図15)でどうでしょう。

図15ー

△45桂に▲68銀など逃げると△56歩と取り込んで次の△57歩成が受からなくなるので、先手の本筋は図15から▲55歩△57桂成▲同金△65歩▲68飛△64銀▲56金(図16)

図16ー

銀桂交換を果たせれば普通は後手良しとしたものですが、この場合は▲68飛から「位」を巡った攻防になるため事態が複雑になります。図16では次の▲65金を受ける必要がありますが△62飛は▲54桂△同銀▲同歩で後手不満。したがって後手も突っ張って図16から△24歩▲65金△同銀▲同飛△64歩▲68飛△25歩(図17)、形勢不明

図17❓

難しい勝負ですが後手も指せないことは無いでしょう。図17から▲28飛には△67金があります。手順中△24歩に対し▲28飛なら△25歩▲同飛△51飛〜△24歩▲28飛△21飛のような展開で一局? また△24歩に対し▲同歩△同角▲28飛は△23歩として①68飛を消せたこと, ②24角が先手陣を睨んでいることを加味して後手指せそうに思います。

戻って図16における△64銀▲56金の交換を入れずに△24歩(図18)もありそうです。

図18❓

前述の変化と比べて△24角が57金に当たること、また先手にカナ駒を持たせない点がメリットです。後手としてはこちらの方が良さそうに思います。

追記2024/1/5

ちなみに先手は△55歩に▲46歩(図19)でお茶を濁す指し方もありそうです。

図19

以下△56歩▲同銀△55歩▲47銀となるとヌルッと事態が収まります。後手としては5筋の位が取れたのは一応の戦果ではありますが、次△54銀だと桂頭の弱点が露呈するためこれは不可、気の利いた駒組みがありません。△63銀→△54銀右→△63金として大模様を張ってみるのはロマンありますが▲26角型との勝負はリスキーです。

現実的には、後手は図19から△94歩▲96歩△14歩▲79金△31角で次△13角〜△45歩のような果敢な展開で勝負すべきように思います。

 

まとめ

本作戦は42角-33桂を主軸にして後手から攻撃を仕掛けることを狙ったものです。先手が67歩型で穴熊に組むなら後手は互角以上。一方で、居飛車は早期の66歩突きによって本作戦への対策は可能です。これに対し後手は美濃に組んで、やや不安は残るものの一応勝負に持ち込めるというのが結論です。