短編でアイデアを紹介します。
まず背景につきまして。居飛穴対策として振り飛車ミレニアムが一時期有力視されたことがあります。△81玉と深く潜った形(図1)は端攻めの反動を受けにくく、また6筋の当たり判定が小さいため△65歩から積極的に動きやすいのが長所です。この振りミレが棋界を席巻できなかった理由は定かではありませんが、おそらく理由の一つには対急戦への不安が挙げられるでしょう。振りミレは将来的に△81玉と潜る関係上、手損を避けるため△72玉の位置で踏ん張りたいという事情があります。それゆえ図2の局面が振り飛車持って困るところで、▲36歩に△82玉では居飛穴を続行されて顔が立たないため、結果として△54歩や△74歩など 対急戦に自信のない手を指すことになります。対急戦と対持久戦の両立に難があると言えます。
そこで今回紹介するのが図3の71玉型です。
以下急戦を狙う▲36歩△43銀▲35歩には△72飛(図4)と回って勝負します。袖飛車に振り戻すための71玉型です。
以下▲34歩△同銀▲38飛△43銀(図5)力戦調で一局の将棋です。居飛車からして後手の7筋攻めが非常に嫌味で、例えば先手が▲66銀と受けに行くと▲66銀△73銀▲68玉△64銀(図6)
以下▲28飛(△25飛消し)なら△75歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛→△35飛などを狙って後手ペース。ちなみに本譜はソフト的には居飛車の最善手順ではありませんが、現実的に見て図5の段階から居飛車が最善手順を指すのは困難でしょう。後手持って好勝負が期待できる局面だと思います。
少し戻って今度は先手が▲66歩と止める手について。これは次に▲65歩の位取りを見ている手です。
以下後手の左金が立ち遅れているのを突いて先手が97角から動いてくる順を見てみましょう。図7から△64歩▲36歩△43銀▲96歩△94歩▲97角△62飛(図8)▲65歩△73銀▲86角△52金▲64歩△同銀▲24歩△同歩▲22歩△45歩(図9)
後手は△62飛~△73銀とすれば6筋が受かります。△95歩があるため先手は一度▲86角と交わしたのち▲24歩~▲22歩と攻めてきますが後手△45歩が成立します。以下考えられる受け方は..
・▲88銀△75銀(後手優勢)
・▲97香△95歩▲同歩△98歩(後手良し)
・▲77桂△75歩(後手良し)
・▲77角△同角成▲同桂△75歩▲67金△39角▲58飛△76歩▲同金△57角成▲同飛△75銀打(後手良し)
このように基本的に後手ペースの展開が期待できると思います。居飛車をもって振り飛車の左金の立ち遅れを明確に咎めることは難しそうです。
結論として、図3のテーマ図から先手は居飛穴に組むのが妥当であり、通常の振り飛車ミレニアムと合流できると考えられます。
おしまい