M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

六間飛車穴熊 ~幻の疑似一間飛車~

奇襲戦法のアイデアを紹介します。
昭和のB級戦法っぽいタイトルを付けてみました...

六間飛車穴熊
初手から▲76歩△32銀▲26歩△62飛▲25歩△64歩▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲26飛△65歩▲48銀△64飛図1

図1:△64飛

32銀型から6筋に飛車を浮くのが意表を突く構想です。ここから穴熊に組みます。
図1から▲68玉△62玉▲78銀△72玉▲58金△82玉▲86歩△92香▲87銀△91玉▲75歩△82銀▲76銀△71金▲78玉△14歩図2

図2:△14歩

ひとまずの完成図が上図となります。本戦法の基本構造は一間飛車を踏襲していますが、特筆すべきは一間飛車よりも圧倒的に再現性が高い点です。6筋という筋は通常の右四間飛車が脅しとなって位を取りやすく「浮き飛車の確保」という点では最適の筋だと言えます。一間飛車だと先手でも▲16歩△14歩で拒否されておしまいですから。
さて図2は先手が△65歩を刈り取ろうとしてきた場合の想定局面です。これは先手の最善策ではありませんが△65歩の安否が気になる変化ですし、まずはこの想定局面からの後手の基本的な立ち回りを見ていくことにしましょう。

基本方針

図2から▲77桂△13桂図3

図3:△13桂の跳躍

後手の△13桂が気持ちのいい活用。次に▲65銀△24飛となると飛車交換が確実となって後手優勢なので、先手はここで▲25歩と受ける必要があります。

図3から▲25歩△52金▲65銀△34飛▲79角△31角▲56歩△54歩▲76銀△62金▲88玉△41銀▲78金△52銀▲57銀△63銀▲66銀△53角▲28飛△55歩▲同歩△74歩図4)結果図

図4:△74歩(結果図)

後手は△34飛が定位置です。6筋と5筋の歩は捨てて飛角の可動域を広げて、△74歩と戦線拡大できれば後手ペースが期待できます。△74歩以下は▲同歩△同銀▲75歩△63銀で一歩持つのもいいですし、△74歩▲同歩△86角でも十分です。歩損していても最悪持ち駒に歩が一枚でもあれば完封されることはないという考え方です。

ちなみに手順途中▲57銀に対し、本譜に代えて△53角▲28飛△35飛変化図A)とする手筋も有力です。またはずっと前に△34飛→△35飛変化図B)とするのも有力です。先手の陣形によっては成立しない場合もありますが、積極的に狙っていきたい手筋です。

変化図A:囲って△35飛  変化図B:即行△35飛

▲36歩への対応

先ほどの変化では先手が▲25歩と受けてきましたが、これに代えて▲36歩図5)という手もあります。

図5:▲36歩

これに対し△24飛と行くと▲同飛△同歩▲65桂△27飛▲37桂図6△25桂▲45桂△37桂成▲53桂成△48成桂▲同金△28飛成▲58金△19龍▲74歩△同歩▲55角△29龍▲72歩△同金▲73歩△71金▲63桂△61金▲72歩成△同金▲73歩図7)が一例で後手敗勢です。

図6:▲37桂   図7:▲73歩(後手敗勢)

このように後手の△41金△32銀の形は飛車の打ち込みには強いものの、どうやら防御力の方は低いようです。特に7筋の叩きと53地点の薄さが先手に攻めのキッカケを与えてしまっています。▲36歩は飛車交換後の▲37桂の逃げ+▲45桂~▲53桂成の攻めを見た侮れない一手といえます。

では後手はどうするべきか。実は答えは簡単で、図5▲36歩に対して△66歩図8)と狙われている歩を捌いてしまえば後手良しです。つまり先手が▲77桂から△65歩を狙う場合どうしても飛車の横利きを通しておく必要があるのです。

図8:△66歩(後手良し)結果図

▲47銀型への対応

先手が角道を閉じずに▲47銀→▲56銀を狙ってきた場合を見てみましょう。

図9:▲36歩

今度は▲88角が利いているので△66歩は不可です。先手は左桂ではなく右銀で△65歩に利きを足してきます。確実ですが遅いのが弱点といったところ。さて具体的に後手がどう指すかですが、まず先ほどとは違って図9からの△13桂は▲37桂とモロに交換になりますし33地点を弱めるだけなので後手微妙。そこで図9から△52金▲37桂△31角▲46歩△24飛▲25歩△34飛図10

図10:△34飛

後手は△52金~△31角の形でも相変わらず飛車の打ち込みに強く、これなら金を7筋に近づけながら53地点もカバーできています。飛車をぶつけて△34飛の定位置に据えます。図10から▲65銀△54歩▲66角△53角▲29飛△36飛図11

図11:△36飛(後手ペース)

△53角が好手になります。▲16飛なら△15歩なので下に引きますが、△36飛と走った局面は後手ペースです。以下▲47金には△26飛▲同飛△同角▲31飛△42金(下図)で後手優勢です。もちろん無難に△34飛と引いても一局です。

したがって先手は右銀で36地点をカバーするのが鉄則です。もし▲56銀で次の▲45銀を狙って来たら...図10から▲47銀△54歩▲56銀△53角図12)となってやはり△53角が幸便になります。▲26飛をどかして△36飛と走れば後手優勢です。先手の▲47銀は動けません。

図12:△53角まで(後手優勢)

ちなみに▲45銀に対応するだけなら△15歩(下図)という手もあります。△14飛と端に逃がせば安泰です。

また△52金を入れずに△31角~△53角(下図)とするのもスマートで、むしろこちらの方が飛車の打ち込みが無くていいかもしれません。金が遠いので穴熊部分は弱くなりますが。

今回は先手が△65歩を取ろうとしてくる場合について検討しました。この戦法は先手が間違わなければ評価値+500ぐらいですが、逆転の芽が非常に多いため後手持って十分使い物になるレベルで有力だと思っています。「再現性100%の一間飛車もどき」というだけでも一定数の価値があるんじゃないかと。
次回は先手が堅く囲ってくる場合について紹介する予定です。

おしまい