今回は菊水矢倉に5筋位取りをされた場合の対策について検討します。
初手から▲26歩△34歩▲25歩△33角▲76歩△44歩▲48銀△32金▲56歩△52金▲55歩(図1)
これが本題の5筋位取りです。先手は即行で▲56銀の好形を目指してきます。後手は途中△52金に代えて△54歩と突けばこれを阻止できるように見えますが、以下のような問題があります。
△54歩(図2)▲78銀△41玉▲79角△51角▲24歩△同歩▲同角△33桂▲68角△23歩▲36歩(図3)
この変化に進んで先手優勢となります。本来なら図3の局面において△52金が入っているため△43金で問題ないのですが、△54歩と突いたため△43金が間に合っていません。一応△41玉を省略して△52金と指し△42角と引いて対応するのも最終手段としてはありますが、これだと将来△62~53銀のとき角の活用が難しくなるので角は△51角ラインが理想です。結論として、後手は△54歩より△52金を優先する必要があるため▲55歩位取りを避けられません。
自然な対応の問題点
図1から後手が素直に進めたとき具体的にどうマズいかというと、・・・図4~図5のように先手の▲45歩があって菊水矢倉に組めません。
一応図5から△33銀▲44歩△同銀▲45歩△33銀と妥協することはできますが、菊水矢倉を目指した後手からすると不満な流れでしょうし、△44同銀に▲54歩といった手もあって鬱陶しいです。ちなみにソフトによると図5から△84角▲47飛△45歩▲同銀△44歩!▲同銀△同金▲同飛△33銀▲47飛△56銀▲46飛△57銀不成▲45飛(▲56飛は△42飛で後手優勢)△68銀▲同金△56銀▲46飛△57銀不成▲45飛△68銀▲同玉△73桂これで意外と後手もやれるそうです。ただし△84角に▲66角があるのでこの順は解決策には至らないようです。
では次に、後手が最速で△51角と引く案はどうでしょうか。結論から言うとこれもダメで、図1から△43金▲57銀△41玉▲56銀△51角(図6)▲46歩△22銀(※△33桂は2筋歩交換~▲45歩△同歩▲54歩△同歩▲44歩で先手良し)▲68銀△62銀▲65銀(図7)△31玉▲78金△33桂▲69玉△21玉▲79玉(図8)
▲65銀と出る手が個人的に厄介だと思っている手で、こうやって後手の歩突きを全て消されてみると図8となって後手はやることがありません。攻撃陣の構築に支障が出るわけです。後手の△84歩~△85歩も、▲77角△84飛▲66角△82飛▲77銀となってほぼ意味がありません。
ちなみに図8から△84歩などに対して先手の▲58飛は攻めとしては成立せず、△42角▲54歩△64歩▲53歩成△同銀▲54歩△65歩▲53歩成△同金で後手の受け切りです。
5筋奪還作戦
今のところ一番有力だと思う作戦です。菊水矢倉からはやや外れますが、5筋の奪還が狙いです。
図1から△43金▲57銀△54歩(図9)▲同歩△52飛▲56銀△54飛▲55歩△52飛(図10)
先に△54歩▲同歩を入れてから△52飛と回ります。これは△54歩に手抜いて▲56銀のとき△55歩▲同銀△54歩で銀を追い返した際に、△52飛の一手を省略できるためです。(△52飛▲56銀△54歩▲68銀△55歩▲同銀△54歩▲66銀は後手の△52飛が損)
また本譜以外の展開としては図9から▲同歩△52飛▲58飛△54飛▲66銀(変化図a)も展開も考えられますが、これには以下△58飛成▲同金左△28飛▲39金△26飛成(変化図b)で後手良しだと思います。
後手は飛車交換に怖い陣形ですが、奇跡的に△71銀が飛車の打ち場所を全部消してくれているので意外と大丈夫です。最後、歩を取らずにじっと△26飛成が好手で、これに代えて△25飛成と歩を取ってしまうと▲55飛で龍を消されます。変化図bからは一旦△62玉とよけてから△25龍としておいて後手ペースの展開でしょう。そのあとは適当な場所から自陣に龍を引いておけば先手からの飛車の打ち込みを消せます。
さて本筋に戻って、図10から▲46歩△62銀▲48飛△53銀(図11)▲68銀△41玉▲78金△64銀▲69玉△42銀▲79玉△54歩(図12)
途中△64銀以前に▲66歩と突いてきたら△54歩▲65歩△55歩▲同銀△54歩▲66銀△22銀から安全に菊水矢倉に組んで、後手ひとまず満足の展開となります。△64銀に対し▲45歩は△同歩▲同銀△55銀で先手の居玉が祟ります。先手が▲68玉~と囲う場合は▲45歩に△同歩▲同銀△44歩▲54銀△同金▲同歩△55歩(△54飛は▲55歩△同銀▲65銀or▲55歩△51飛▲54金で悪い)~△54飛としてもよいかもしれません。本譜、後手は5筋の奪還を狙います。
図12から▲54同歩△同金▲66歩△55歩▲67銀引△43銀(図13)
5筋を押し返して△54金型に組みます、結果図は後手良しです。
途中の変化としては▲66歩に代えて▲45歩もあり、以下△55歩▲47銀△45金(※△45歩は▲36銀で純粋な金銀交換になり後手損)▲36銀△同金▲同歩△43銀で一歩得した後手が指しやすい展開です。以下▲37桂には個人的に△54銀打を最善手としたいです。
やはり菊水は4筋に難あり
この記事はあくまで菊水矢倉の記事なので、できれば△64銀などで有利にするよりも菊水矢倉に組む方法を見つけたいところです。特に前述のように後手は△52飛~△53銀として4筋に利きを足せるので、最初のうちはこれで菊水矢倉に組めるだろうと思っていました。しかし結論を言うと、先手からの攻めが成立するため菊水矢倉には組めません。
菊水矢倉を目指す△51角→(図14)
図14から▲45歩△同歩▲同銀△44歩▲54歩(図15)
これに対し△同銀は▲44銀で普通にダメなので△45歩しかないですが・・
図15から△45歩▲53歩成△同金▲45飛△44歩▲85飛△82飛▲71銀(図16)
これにて先手優勢となります。したがって後手は△53銀からそのまま菊水矢倉に組むことはできず、現状では5筋奪還作戦を選ぶのが良さそう、という結論になります。