▲37玉戦法とは上図のように袖飛車から▲37玉経由で穴熊を目指す戦法です。狙いは3つあります。
- 急戦に対して袖飛車から攻め合いで勝負
- 袖飛車が△33角&△32玉に当たるので相手は穴熊に組みづらい
- 「振り穴→袖飛車振り直し」と比較して一手得
下記サイトに▲37玉戦法に関する記述があります。
この戦法は森安秀光氏が考案したと言われていて、1988年当時は結構話題になったらしいです。その影響で他の棋士も意外と多く指していました。
棋譜集
・森安秀光 vs. 真部一男(初出局) ・畠山鎮 vs. 阿部隆
・中井広恵 vs. 長沢千和子 ・林葉直子 vs. 清水市代
・畠山鎮 vs. 鈴木大介 ・羽生善治 vs. 先崎学(急戦に惨敗)
不思議なことに森安氏は▲37玉戦法を一局指しただけでその後は一切採用していません。初出局より後に森安氏が指した▲37玉戦法に近い将棋↓
急戦に惨敗している棋譜(羽生vs先崎)について、上図左は▲37玉戦法の課題局面だと思います。ただし形勢悪いとはいえ、本譜△51角~△64銀(上図右)という交わし方はアイデアとして非常に参考になります。飛車が左辺にいないことを活かした珍しい受け流しです。本譜▲96歩は△51角~△95角の筋を消した手ですが、代えて▲34歩△51角▲44銀△64銀▲33歩成の方が順当に厳しく、後手としてはこちらの方が嫌だと思います。
このような展開は避けようと思ったら、下図の駒組みが有力だと思います。
上図からは..
①▲36歩には△43銀~三間飛車
②▲66歩や▲78銀には△53銀~四間飛車(または楠本式石田流)
③▲78玉には△72飛~穴熊
といった展開が考えられます。この場合△73玉は、飛車の振り場所を後出しで決めるための手待ちの意味が強いです。
ちなみに②の楠本式石田流とは下図のような陣形のことです。通常は△54銀型ですが、事前に先手に▲66歩を突かせることができていれば△53銀型でも問題なさそうな気がします。△74歩の一手を上手く活用できるので気分的には気持ちいいです(笑)
工夫 (銀冠+62飛への応用)
▲37玉戦法をもとにして手損なしで銀冠+△62飛に組める可能性があります。
上図から▲77角△62飛(下図左)▲88玉△82玉▲98香△72銀▲99玉△73桂▲66歩△84歩▲88銀△83銀▲67金△72金(下図右)ここまで組めれば一手得なので後手満足。
銀冠+62銀の過去記事↓
右四間に振った上図左以降でも、急戦に対しては△32金・△42金・△82玉~△72飛(下図)などがあり後手そう簡単に悪くならないと思います。
上図からは▲55角△52金左▲64角△92玉~△63金~△75歩を見て勝負。
以上
【余談】
▲37玉戦法はもともと知っていたのですが、飛車が初期位置の状態で先に△73玉として飛車の振り場所を保留するアイデアに関しては、実はこの動画にインスピレーションを得て思いつきました。Bong Cloud Openingという舐めプ戦法です。(△82飛△73玉の棋譜を漁ってみたところ棋譜集に載せているように、過去に同じことを思いついた棋士がいたようですが)