今回は44銀43金型の左玉について、アイデアを短く紹介します。
まず開発の背景として、図2は高田流左玉にアレンジを加えた独自戦法「四間型左玉」の欠点の一つ。このように平矢倉+56銀型に組まれると、31角の隙に46歩同歩同銀45歩同銀(図3)となり後手不利になってしまいました。
この変化の発見をもって四間型左玉は本格的に苦しくなりました。
この点、本家の高田流左玉では2筋歩交換の動きがあるので46歩同歩同銀の筋を牽制できています。しかしでは高田流左玉の方が優秀なのかと言うとそうでもありません。図4の変化で左玉としては不満です。確実に4筋の位を取れるというのが四間型左玉の売りなのです。
つまり❶確実に4筋の位を取り、❷相手の平矢倉+56銀型を牽制する、の2つを両立する駒組みを編み出す必要がありました。
ここで本題に戻ります。44銀43金型が最近有力視している陣形です。駒組みの際の注意点としては図5のように33銀→44銀と出ていくことです。角交換は避けておくのが無難です。早めに44銀型で構えておくことによって、相手が平矢倉を目指した場合▲36歩△35歩▲同歩△同銀で後手満足となります。
この戦法のデメリットとして高田流左玉のような優秀な最終理想形がありません。その代わりに早期に安定した陣形を築けるのが44銀43金型のメリットです。
図6からは基本的に△24歩~△25歩~△22飛で間合を測りながら先手との争点を探る感じになります。先手が棒銀系の攻撃陣に組んでくるなら△82銀(図7)、先手が腰掛け銀系の攻撃陣に組んでくるなら△62銀(図8)と活用します。
2022/4/30追記
56銀対策
図9は三間飛車56銀型の基本図です。検討の結果、図8の駒組みではまずいことがわかりました。具体的な失敗例を挙げると
図9から△24歩▲56銀△25歩▲75飛(図10)後手不利
図10では次の▲45銀を受けて△54金ですが、この場合は44銀との相性が悪く、以下▲65銀△55金▲56歩△65金▲同歩で後手不利となってしまいます。
どうやら後手は先手の▲56銀+▲75飛の陣形を許してはいけないようです。※事前に▲97角が入っている場合には▲56銀~▲75飛~▲45銀△同銀▲同飛△66角で後手有利
戻って図9を再掲
前述の内容を踏まえて、後手の正しい駒組みは図9から△22飛▲56銀△54歩...[分岐]
❶▲75飛△55歩▲65銀△53銀(図11)後手満足
❷▲97角△42角▲同角成△同玉(図12)後手満足
図11では次に△64歩と追い払ってから△54銀の大模様を築けます。また図12では45歩の位を維持しつつ安定した左玉に組めて後手満足です。警戒すべき筋としては図12以下▲65銀~▲74歩△同歩▲同飛~▲54飛という強襲があるので、▲65銀には△53銀が良いでしょう。以下△33桂~△21飛~△62銀上がプランです。
※ 図12で事前に△62銀が入っていた場合は注意が必要で、△42玉にすぐ▲61角△82金▲86飛から強引に8筋突破されて後手劣勢になってしまいます。駒が立ち遅れているようでも71銀で待機した方が安全です。
※ またそもそも図9において相手が▲96歩を入れてこない場合、▲97角がないので後手も△22飛を省略し、▲56銀△54歩と間に合わせて問題ありません。
まとめると、三間飛車▲56銀型に対しては
早めに△22飛と回り△54歩~△55歩を見せる
というのが有力な対策です。