M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

大内延介の「ツノ銀+穴熊」

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大内延介 九段(1963年プロ入り)

大内氏振り飛車穴熊の使い手で「穴熊党総裁」との呼び名があります。1963年当時において穴熊は邪道であり、大内氏の活躍によってプロ界に穴熊の風が吹き込むことになります。その後は氏の影響あってか1970年頃から玉頭位取り対策として振り飛車穴熊が有力視され、1976年からはプロで本格的に居飛車穴熊が台頭しました。氏が採用していた陣形の一つがトップ図です。

ツノ銀中飛車+穴熊

一般的に穴熊の強みは❶遠さ❷堅さ です。しかし振り飛車穴熊の場合は防御ため43銀型が望ましく、金銀4枚の堅陣に組みにくいという欠点があります。そこで方針転換し❶遠さ❷バランス を実現しようとしたのがこのツノ銀中飛車+穴熊という構想です。また他のメリットとしては序盤△45歩▲66歩△55歩によって後手は5筋歩交換+54銀型の好形を築くことが可能です。その一方、本戦法の命運は辺境に孤立した△32金が活躍するか否かにかかっています。

具体的に検討してみます。

▲86角への対応

トップ図から▲86角図1△43金▲16歩△14歩▲36歩△71金▲37桂△61飛▲46歩△64歩図2)互角。

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図1:86角    図2:結果図(互角)

▲86角に△43金~△64歩という手順は大内氏棋譜を参考にしました。

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本譜では図2以下▲45桂でしたがここでは▲45歩も十分あるところです。その場合後手は歩損になりますが、駒効率が良いのでプロ的には先手やや不満なのでしょうか。。。

▲48飛への対応

トップ図から▲48飛図3△44角▲46歩△33桂▲45歩△同銀図4)互角。

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図3:48飛の攻め    図4:結果図(互角)

ちなみにトップ図から▲46歩△同歩▲48飛△45銀▲46銀△56銀変化図a)これは後手良しとなります。先手が▲56歩を打っていない場合でも同様の手順で後手ペースです。

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変化図a:(後手良し)

 

▲36歩への対応

トップ図から▲36歩図5△71金▲59角△42角▲37角△35歩▲同歩△36歩▲26角△64角▲18飛△43金図6)後手ペースの展開。

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図5:36歩    図6:結果図(後手ペース)

▲36歩はたぶん先手も怖い手でしょう。対して後手は△55歩も当然有力です。以下▲37桂△56歩▲同銀△15角変化図b)などで形勢難解ながら後手も戦えそうです。なので先手も▲36歩より前に▲16歩は入れてくることが予想されます。

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変化図b:15角(形勢難解)

最後に、大内氏が玉頭位取りに対して同様にツノ銀+穴熊を採用した棋譜を紹介します。通常 玉頭位取り側から角道を止めてくれるため、中飛車側から△45歩を突かずに△54銀型を作れます。この場合▲65歩で角交換を狙われる危険性がないので△32金→△42金→△52金→△62金と寄せていくのが良いようです。(というかそもそも対玉頭位取りでは△32金必要ないかも・・・)

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おわり