山口英夫 八段(1964年プロ入り)
山口氏はノーマル中飛車・四間飛車を主力にした棋士です。中飛車の持久戦では主に△42金→△53金→△63金と無難に高美濃に囲って凡庸に戦うことが多いです。
英ちゃん流中飛車とは、ノーマル中飛車で54歩を保留する指し方のことをいいます。54歩を保留するメリットとしては
・急戦の成り行きで△32飛などと回った際に価値の低くなる△54歩を保留
・△54銀の活用が可能
今回の記事では後者△54銀について考察します。ネットを探した限りこれについての文献は少なく、何より棋譜を見ても山口氏本人がほぼ全くと言っていいほど英ちゃん流中飛車から△54銀と出ていないのです。ただ、升田幸三氏は英ちゃん流から△54銀型を好んで指したらしいです👇
自分で考えた感じ、こういうことですね↓
第一印象としては中飛車に振った手と一貫性が無いようで、意外とこの△54銀はアリかもしれません。例えば△54銀以下
①▲66銀△64歩▲55歩△63銀(下図)
②▲66歩△64歩▲67金△63銀▲88玉△54歩(下図)
いずれも後手の中飛車が働く展開で後手面白そうです。特に②に関しては△54銀によって先手の角道を閉じさせ、5筋歩交換に持ち込むことができます。一般的に中飛車で5筋歩交換をするには△73桂▲66歩△55歩か、△32金~△45歩▲66歩△55歩の2通りのやり方があります。しかしいずれも桂跳ねや金開きなどの形を決めてしまう嫌いがありました。それに対して今回の△54銀は、形を決めずに5筋歩交換だけを実現できます。
②の展開はソフトによると後手不利のようですが、②の最終図からは後手穴熊に組んだりして人間的には面白い将棋かと思います。
おわり