今回は四間型左玉の問題点と改良案について考察します。
前回の記事はこちらです。
まず前回の駒組みにおける問題点に関してです。単刀直入に手順を示すと・・・
図1から▲74歩△同歩▲55角△82銀▲74飛△73銀▲34飛(図2)
一歩損となり後手不満だと思います。2筋とかならまだしも、3筋の桂頭がハゲるのはカッコ悪すぎます。図2の局面をもって前回の記事の駒組みに欠陥があるので、駒組みを工夫する必要があります。
改良案①
この△54歩は先手の▲55角や▲74歩△同歩▲同飛→を防ごうという意図です。結論を言うとこの意図自体は上手くいき、後手は図2のような展開を回避できているのですが、しかし以下の進行で後手不満となります。
図3から▲96歩△45歩▲58金△41飛▲66歩△43銀▲65歩△42玉▲46歩(図4)
諸悪の根源は△54歩と早く突いたことにあり、まず後手は△43銀と上がるために△41玉の一手が必要だが△41玉には▲97角で飛車引けず不満。よって△41飛~△42玉のルートになるが4筋の飛車の利きが止まるので▲46歩~▲44歩がキツイ、ということで後手不満です。ちなみに△43銀無しに△62銀と上がると▲74歩△同歩▲同飛で54歩を取られてしまいます。
また他にも図5のように先手の▲57銀型も優秀。5筋を交換して▲56銀の好形に構えられるのはかなり厄介だと思います。
改良案①の考察から見えてきた事実としては、まず早期の△54歩は△41飛~△42玉の危ない形を伴うので実戦での安定性に欠けること、そして根本的な問題として後手の△33桂は先手に▲67歩▲57銀型の好形を許してしまうということです。
後手としては△33桂の姿勢を改め、△45歩角交換を見せて▲66歩を止めさせるというのが(当たり前ですが)有力に思えてきました。
改良案②
前回の記事でも触れた通り、△24歩の課題は▲56銀~▲37桂で△45歩に圧力をかけられた際に△62銀→△44銀が間に合わなくなる点です。改良案②における工夫は
・△51玉待機△62銀によって▲56銀には△55歩で反撃する
・△62銀→△44銀が整ってから△41玉から入城
・▲97角には△41飛→△21飛→△31角で対抗
・棒銀に対して△62銀型で受けが間に合う
図6から▲56銀△55歩(図7)
△55歩に▲45銀は△35歩~△33桂として後手良し。この変化は後手にとって左辺を大きく削られるので、△41玉→△32玉とこちらに囲う前に△62銀→△44銀で4筋を支えておくか、最低でも△62銀ぐらいは入れてから△41玉と寄りたい気がします。いずれにせよ後手は△55歩を軸にして▲56銀に対抗できる可能性が高そうです。
次に先手が▲56銀に代えて▲96歩→▲97角としてくる場合を見てみます。
図6から▲58金△62銀▲96歩△33桂▲97角△41飛▲56銀△21飛▲77桂△41玉▲28玉△31角(図8)
角交換は後手良しなので図8は後手良しです。ソフトが言うには図8から▲31角成△同玉▲61角△82金▲86飛△92角▲52角成△同銀▲45銀△同桂▲85飛~▲46歩とかいう手順があって先手良しらしく、なので後手も△92角のところで代えて△88角から攻め合うそうです。もしこういうのを気にするなら、図8では下の参考図0のように△32玉まで入れてから△31角▲同角成△同飛とする方が安全そうですね。
ちなみにソフトによると後手にはもう一つ気を付けるべき手順があり、図6から▲58金△62銀▲96歩△33桂▲97角△41飛▲56銀△21飛▲65歩△41玉▲28玉△31角▲88角△42角▲46歩(参考図1)
この▲97角~▲65歩に対しては後手は参考図2のように△53銀と上がるか、またはこれも参考図3のように△32玉まで入城してから△31角▲88角△53銀として互角なようです。
また他に先手の狙い筋としては下の参考図4のような▲65銀が考えられます。
後手が普通に参考図4から△41玉だと▲74歩△同歩▲54銀△同銀▲74飛の攻めがあります。また後手がこれを防いで参考図4から△53銀としても▲77桂△41玉▲74歩△同歩▲同銀△73歩▲同銀△同金▲65桂などで7筋突破が決まってしまいます。
工夫すれば受けれそうな気もしますが、できればこういう弱点は消しておきたいところです。今後の研究課題です。
2021/10/14追記
この▲65銀の解決策として△82金なんてどうでしょうか?(笑)
▲74歩△同歩▲54銀△同銀▲74飛のときの金取りをかわした手です。この筋さえ消えれば後手は△21飛△41玉△31角で▲97角をどかせる気がします。ソフトにかけると▲74歩△同歩▲同飛△73歩▲54飛!とかいう攻め筋で先手優勢らしいですが、これは流石に人間の指す将棋とは関係ない気がします...△82金でいいんじゃないでしょうか(;・∀・)
追記終了////
ぐだぐだな検討ですが、全体としては▲97角に対して後手も悪くないと思います。
最後に△62銀型で棒銀を受けきれるかどうかを検討します。
図6から▲58金△62銀▲86歩△41玉▲85歩△32玉▲86飛△41飛▲84歩△同歩▲同飛△82歩▲85飛△33桂▲76銀△31角▲75銀△53角▲84銀△74歩▲83歩△73桂(図9)
図9では後手の反撃が間に合っていますし、もし後手が一手遅れても△53角を省略すれば間に合いそうです。
また手順は省略しますが、棒銀で▲77角~▲88飛と深い陣形にしてくる場合は参考図5のように最悪△71銀と戻せば8筋が受かります。△62銀の一手であれば(△71銀待機で△82銀を残さなくても)棒銀に対して十分対応できそう、という結論になります。
以上の検討より、改良案②は▲97角に少し課題が残るものの、基本的には互角の将棋になると言えそうです。改良案②は有力な手段だと思います。
追記2021/10/12
この局面から▲22角△同飛▲74歩(参考図7)は考えられます。
これをやられるとさすがに矢倉にせざるを得ないかと思っていましたが、ここから左玉に合流する指し方があります。
以下△82銀▲73歩成△同銀▲78金△64銀▲77桂△73歩(参考図8)
△64銀からの△73歩は珍しい手ですが、これで参考図8から△55銀→△44銀で左玉に合流できます。▲56歩には△54歩から△53銀→△44銀で同じく合流できます。
ちなみに参考図7から△82銀▲73歩成△同銀▲55角(参考図9)という攻めはあります。
これには参考図9から△33角▲同角成△同桂▲55角△42玉▲77桂△54銀(参考図10)
これで後手不満ないと思います。最後の△54銀という手は▲73角成△同金のときに▲65桂を消す意味です。
ちなみにちなみに、途中で▲73歩成と取ってこない場合は・・・
参考図11以下は△74歩▲同飛△73歩▲75飛△33桂(参考図12)
これで問題ないでしょう。銀は引き付けれませんが角交換に満足ということで。手順の途中、▲74飛に△73銀とすると▲同飛とされる危険があります(ソフト)。以下△同金なら▲65桂、△同桂なら▲74歩で先手の美濃の堅さが活きる展開。本譜▲74飛△73歩が最も無難だと思います。
改良案③
基本的には改良案②でも問題ないと思うのですが、少し補足的な立ち位置で改良案③を紹介します。
図10は図6と同じ局面です。改良案③の特徴は
・▲56銀に△33桂、▲37桂に△25桂で反撃
・先手が▲58金や▲65歩を入れる場合は△33桂▲56銀△62銀→△44銀安定
図10から▲56銀△33桂▲36歩△62銀▲37桂△25桂(図11)
先手の▲56銀に△33桂として45歩を受け、▲37桂に△25桂と反撃するのが改良案③の特徴です。図11で桂交換は△61玉などで後手有望なので
図11から▲45桂△17桂成▲同香△44歩(図13)
となって△14歩→△16歩の明確な狙いがあるので後手良しだと思います。結論として図10から後手の▲56銀△33桂が成立すると思います。
局面を戻して図10から先手が最速で▲56銀~▲37桂を目指さず、一度▲65歩を入れてくる場合を見てみます。
図10から▲56銀△33桂▲65歩△62銀▲36歩△53銀▲37桂△44銀(図13)
図13となっては4筋が安定して後手満足でしょう。
ここまでをまとめると、図10から即▲56銀~▲37桂には△33桂~△25桂、図10から▲65歩などなら△62銀~△44銀で後手やれると思います。
他に、先手の▲96歩~▲97角や棒銀に対しては改良案②と同様に受ければよいと思います。
まとめ
今回の記事では、前回の駒組み(△33桂~△45歩)の欠陥(▲74歩△同歩▲55角~▲34飛)を指摘しました。改良案①として△54歩の工夫を取り入れましたが△42玉ルートの危険性や先手の▲57銀型の優秀性から考えて、根本的に△33桂自体を見直す方向になりました。改良案②として△24歩型から▲56銀△55歩を提唱しました。これにより▲56銀~▲37桂に対抗できると判断しました。▲97角や棒銀にもそれなりに対応できると判断しました。また改良案②の補足として改良案③(▲56銀△33桂)も紹介しました。
今回の研究は綺麗にまとめるのが難しく、説明がぐだぐだになりましたが以上で終わります。