M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

44角型向飛車のアイデア・検討

今回は相振り飛車でのアイデアについて書いていきます。主に対石田流を想定しています。

初手から▲76歩△34歩▲75歩△32金(図1)

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図1:32金

まずは▲75歩に対して△32金と上がります。この▲32金が僕の最近のトレンドで、先手に▲66歩を突かせる意味です。将来の66銀型を消しておくのと、角道を止めさせたことで後手から△45歩が突きやすくなります。

 

図1から▲66歩△44歩▲78飛△42銀▲74歩△同歩▲同飛△73歩▲76飛△43銀▲96歩△45歩▲97角△44角(図2)

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図2:44角

先手からの▲97角を防ぐというのも僕の最近のトレンドです。▲97角△52飛を強要されるのは悔しいですから。図2では△44角が間に合います。▲46歩△同歩▲45歩などは怖くなく、以下△35角▲36歩△24角▲53角成は△47歩成の方が厳しいです。先手が▲53角成に代えて途中▲48金などと受けても、後手は△52飛~△62銀~△42飛とすれば先手は4筋の形が酷く後手優勢です。なので図2からは穏やかに駒組みが進みます。

図2から▲48玉△54銀▲38銀△43金▲39玉△22飛(図3)

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図3:結果図

通常の向かい飛車と似た形になります。

まとめると、図3:結果図におけるポイントは

①序盤に△32金▲66歩の交換が入っている点

 これによって対向かい飛車で有力な66銀型を消せています。また元来△32金という手はその後の活用方法が課題でして、例えば△33金~△44金と凧金にしてみたり、54金型に組んだりして上段金で活用する方法が模索されてきました。しかし今回のアイデアではそれよりも一般的な形である54銀43金型に組んでいます。つまり上段金の独特のメリットを活かして戦うのではなく、あくまで普通の向かい飛車に似せて戦うという意図があり、これが今回の構想のコンセプトです。

②後手が△44角と一手で上がれている点

 通常、向かい飛車では△33角型となるのが宿命で、33地点よりも積極的な44地点に角を一手で配置できるのは大きなメリットだと思いました。早めに△44角型を築くことには「積極的」の他にも良いことがあって、それは平矢倉を牽制できることです。▲36歩△35歩▲同歩△同角があるので、先手は平矢倉に組みにくいと思います。

 

イデアの提案はとりあえずここまでとして、ここで一つ思いついたことがあります。

「54金型向飛車でも44角型はどう?」

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図4:44角型

・・・意外と名案かもしれません。△33桂が入るので▲75飛~▲45銀が無効になります。また▲46歩△同歩▲46銀にも△45歩で追い返せます。それと後手から△35歩▲同歩△同角~△25桂などの攻めもあります。25歩を保留したのも今回の工夫点です。いい感じですね(・.・;)

ぱっと思いあたる問題は2つあります。

【1】最序盤の安定性は大丈夫か

【2】84銀の筋は維持できるか

それぞれ見ていきます。

【1】最序盤の安定性は大丈夫か

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図5:44角

残念ながら問題ありのようです。心配な筋は複数あります。まずは・・・

図5から▲74歩△同歩▲同飛△33桂▲75飛△22飛▲65銀(図6)

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図6:65銀

これは一大事です。例えば図6から△同金▲同飛△74銀▲43金△65銀▲44金は手番を握った先手優勢です。また図6から△55金も▲74飛で先手優勢です。

結論として、図5の局面は後手まずいようです。

 

【2】84銀の筋は維持できるか

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参考図1

84銀の筋というのは参考図1のことです。▲97角に対して有力な手段で、これを実現するために序盤は△73歩を謝らずに△82銀などで受ける必要があります。そのために後手は飛車移動を急ぐ必要があります。従来の54金型向飛車では飛車移動が間に合っていましたが・・・

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図7:76飛

結論から言うと54金44角型では後手の飛車移動は全く間に合いません。具体的には図7では△73歩を受けなければなりません。なので84銀の筋は諦めて、対平矢倉に限らず基本的には図8↓のような美濃(62金)に囲って△43銀~△52銀のように進めることになりそうです。

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図8:美濃(62金)

まぁこれも一局ではありそうです。ですが図8から▲65銀△55金▲67金~▲56歩の攻めはそこそこ怖いです。やはり84銀の筋がないと▲97角~▲65銀で一方的に攻められることになります。従来の△33角ならば▲65銀に最悪△44金と逃げておけば問題なかったのですが、△44角型ではそれができません。しかも▲65銀で△54金を消されると△44角自体も露出するので、その意味でも不安をそそります。

 

まとめ

この記事ではまず△54銀△43金△44角の布陣を提案しました。現時点では問題点は見つかっていません。

次に△44角型に注目して、従来の54金型向飛車+△44角型を検討しました。検討の結果、まず54金型向飛車+△44角型は平矢倉対策として超有望。しかしその一方で54金型向飛車+△44角型は

【1】序盤の安定性に大きな問題がある。

【2】84銀の筋が維持できないため対平矢倉以外に不安がある。

ということがわかりました。したがって54金型向飛車+△44角型を使う場合は序盤はおとなしく△33角として通常の54金型向飛車で対応し、先手の平矢倉が確定し次第△44角と上がるのが現実的だと思います。その際に△25歩を保留するのが一つのポイントです。これによって54金型向飛車は平矢倉に対抗できそうな気がします。