M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

中飛車→四間のアイデア

こんにちは。このページでは短編で、僕がちょっと思いついたアイデアを書いてみます。

研究背景・目的

この作戦はノーマル中飛車からの派生します。まず初めにノマ中飛車居飛車穴熊と相性が悪いがために廃れた戦法、という認識が一般的かと思います。ただしその一方でノマ中飛車(32金型)は急戦への耐性が高く、また角交換にも耐性があるのでミレニアムなど近年の最新戦法に対応しやすいという特徴があります。極端な言い方をすれば、ノマ中飛車は居飛穴さえ克服すれば最も優れた戦法になり得るんじゃないか、少なくとも僕はそう思います。居飛穴対策においてノマ四間やノマ三間などに及ばないまでも、なんとか同程度の形勢にする手段が見つかればノマ中飛車復活の足掛かりになるのではと思います。具体的には、ノマ中飛車からノマ四間にうまく合流・または似た展開にできないかという点をこの検討のテーマとします。

 

作戦の概要とメリット

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図1                    図2

図1, 図2を見てもらえばだいたい何をやりたいかお察しできると思います。あえて言葉にするなら、このアイデアの趣旨は「中飛車の序盤から四間飛車に転換して53銀型を活かそう!」ということです。中飛車→四間という大まかな構想で見ると矢倉流中飛車と同じですが、急戦を狙わない代わりに73桂から66歩を強要して持久戦にするという点が矢倉流中飛車との違いです。

さて、読者側に立ってまず疑問を挙げるとすれば、図2の局面はべつに三間飛車からでも合流が可能なのでは?という点がありますね。回答としては、厳密には三間飛車からでは合流できません。中飛車でなければならない理由があります。

三間飛車から上図右の局面に合流しようとした場合、居飛車には5筋不突き穴熊図3)やコーヤン流対策の56歩48銀68角図4)があり、居飛車に57銀・66歩を突かせることはできません。

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図3:一直線穴熊            図4:コーヤン流対策

一方で中飛車の序盤ならば・・・

  • 5筋位取りを見せて56歩を突かせる
  • 64銀~55歩の攻めを見せて57銀と備えさせる

ということができるので図5の通り、一直線穴熊とコーヤン流対策の陣形を両方消すことができます。これならば、続く73桂で居飛車の66歩を引き出せる(図6)ので後手もそこそこ気分がいいんじゃないでしょうか・・・

ちなみにこの73桂のところで居飛車66歩に代えて66銀はあり得ますが、以下64歩68角65歩77銀85桂86銀45歩78玉99角成 (or84歩)と進んで、これは居飛車がわざわざ望んで飛び込む展開ではないと思います。ソフトは73桂66銀64歩99玉65歩57銀でやや先手持ちという判断ですが、まぁ常識的に考えて人間は57銀→66銀→57銀は選ばないでしょう(;´・ω・)

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図5:56歩57銀を強要           図6:66歩を強要

で、居飛車に66歩を突かせたとします。以降は四間飛車に振り直して自然に駒組みを進めると、だいたい図7あたりの局面になります。

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図7:基本図

ここで「ノーマル四間飛車との比較」という観点から見てみましょう。ノマ四間では32銀型から41銀→52銀→53銀を目指す手順がありましたが、確か・・・はい、忘れたんですが何かの手順で振り飛車不満だったような気がします(笑) たしか68角37桂の局面で41銀37桂52銀に居飛車仕掛けて46歩同歩同銀65歩55歩同角同銀49飛成~みたいな感じだったかな・・と思うんですけどね。要するにノマ四間から53銀に組もうとするとひと悶着(もんちゃく) あるようなのです。その一方でこの中飛車→四間の作戦では最初から53銀と決めているので少なくとも "その悶着" はありません。別の悶着はあるかもしれませんけどね(;・∀・)

またノマ四間から53銀型に組むには二手損ですが、この中飛車→四間の作戦では一手損で済むという点もメリットです。

他には53銀型四間飛車(最序盤に53銀決めてから直に42飛とするやつ)ならゼロ手損で同じ形に組めますが、53銀型四間飛車は急戦に不安を抱える印象があります。冒頭でも書いた通り、中飛車→四間なら急戦にはツノ銀中飛車で対応が可能なので序盤の安定感を期待できるでしょう。

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図7:再掲             図8:65歩開戦

さて具体的な手順について書いていきます。まず一番気になる図7からの65歩開戦、これは意外と怖くないんじゃないかと想像しています。例えば図7から24歩同歩65歩同桂33角成同桂66銀64歩、または図7から36歩64歩24歩同歩35歩同歩65歩同桂33角成同桂・・・いずれも通常の54銀型より振り飛車玉が堅いので、おそらく振り飛車持って嫌な仕掛けではないのではと・・・まぁ65歩開戦の専門知識がないので推測と想像の域を出ないのですが。

 

 

居飛車の対抗策

ここまでは聞こえの良いようにこの作戦について書いてきましたが、ここからは自信の無い話になります。この作戦の最重要課題として26飛~36飛の揺さぶりが挙げられます。例えば図7から26飛64歩36飛43金(図9

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図7:再掲             図9:43金の受け

と自然に対応するのでは玉の薄い将棋になるので、個人的にはできれば避けたい展開です。べつに玉が薄いこと自体に不満はないのですが、この場合中飛車四間飛車と一手損してまで53銀型を作って堅さを得ようとしているのに、43金と上がらされるようでは変調の感は否めません。しかも43金で受けるということは居飛車が36歩突いたりするまで永遠に63金上がれないってことですしネ。

なのでできれば43金以外で26飛~36飛を受けたいところです。候補としては45歩を突かずに36飛24歩同歩22飛で捌きあうのが考えられます。図10は基本図で45歩に代えて64歩と待った局面です。以下79金63金26飛94歩36飛24歩(図11

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図10:45歩保留            図11:24歩の反撃

図11からは①24同歩22飛34飛24飛同飛同角23飛25飛21飛成57角成25龍67馬(図12

34飛25歩46銀22飛35銀26歩68角(図13などが予想されます。

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図12:①飛車捨ての変化       図13:②先手抑え込みの狙い

いずれも形勢判断をするにはまだ早い局面なのですが、少なくとも後手も勝負に持ち込めそうな気配は漂っていると思います。

ちなみに79金のところで78金とするのは28飛が先手で入るので後手やれるでしょう。また念のため書いてみますが①の変化で21飛成に代えて居飛車46歩とした場合、急いで29飛成としてはいけません。29飛成21飛成95歩36桂(図14で角が死にます。46歩には冷静に33桂図15)で後手良しです。

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図14:36桂に注意           図15:冷静に33桂

はい。ということで36飛対策としては45歩保留で24歩から反撃すればなんとか勝負になりそう、これにて一件落着・・・と、そうはいきません。

そもそも振り飛車が45歩を突く理由って松尾流対策のためなんですよね。ということで居飛車としては図10から78金63金26飛94歩68銀(図16

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   図10:再掲           図16:松尾流で居飛車良し

これは振り飛車ダメですね(+_+) 図16以下どうやっても松尾流~68角が間に合ってしまいます。

どうやら図10の手前から考え直す必要があるようです。例えば63歩待機で銀冠に組んだり、四間に振る前に5筋で歩交換を入れるとか。ただ今回の検討のテーマは「ノマ四間の定跡形に沿わせて戦えないものか」というものでした。64銀や5筋の歩交換という話はこのテーマから逸脱しています。

ということで、ここ(松尾流に対応できない点)が中飛車→四間作戦のとりあえずの終着点・結論ということになります。

64銀や5筋歩交換は今後気が向いたら検討してみます。

 

2021/01/07追記

KYS様からのコメントで、図7から44角はないのかというご指摘がありました。あります。恥ずかしながら見えてなかったです(*^▽^*)

居飛車の金の貼り付け方が難しいところですが、少なくとも実戦では78金か79金か入れてから26飛浮いてきそうなものなので、とりあえず図7(再掲)から79金64歩26飛44角(図17の進行を考えてみようと思います。

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図7:再掲         図17:44角の展開

図17から36飛32飛46歩(図18

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図18:46歩まで

すんなり32飛~35歩26飛36歩同飛同飛同歩で飛車交換になれば振り飛車優勢なので、居飛車は46歩から反発するのが自然な流れでしょう。図18からは後手がすぐに46同歩なのか35歩16飛46歩なのか、またそれに対して先手が46同飛なのか46同銀なのかというややこしい話になります。

僕の結論をいうと46同歩と素直に取るのが良いと思います。というのも図18から35歩16飛46歩同飛(図19が厄介で、こうなると次に角ブッちぎって暴れる筋や75歩の攻め筋があって後手耐えきれないと思います。

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図19:後手不満な展開

よって図18からは46同歩とし、これに同飛なら42飛図20と寄って次に35角を見せて後手もやれると思います。KYS様も言われていましたが、特に79金の場合は35角のラインが居飛車にとって脅威になるでしょう。図20からは36歩または68銀と進行するのでしょう。いずれも一局ですが、図20から68銀に35角と捌くのは流石にまずく、代えて85桂86角65歩を本筋に考えたいです。一度33桂なんかを入れておくのもいいかもしれません。

また図18から46同歩同銀なら35歩16飛(図21と進んで図19の後手不満の展開を避けれていることになります。避けたからといって後手ペースには程遠いですが、構想力の腕が試される将棋でしょう。これも一局です。

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   図20:42飛の捌き        図21:不満な展開を避けれる

44角以降の手順・手の方向性についてはこんな感じかと思います。特に図20のように飛車を捌きあうような場合だと居飛車からの75歩やKYS様曰く86桂も致命傷なので、後手は指し手に困ったら64歩~63金を優先するのが正しいと思います。

 

ちなみにこれは僕が思ったことなんですが、73桂って66歩を突かせた以外は寧ろ弱点としての機能しかないのでは?95歩が入れば端攻めが可能になりますが、今の感じだと64歩~63金とかも指したいので95歩が入るのはだいぶ後になりそうですよね。いっそのこと71玉かつ95歩を優先(図22)して、桂は守らず跳ばすのもアリなんじゃないかと思うんですよね。

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図22:桂は守らず跳ばす

とりあえずアイデアの発案までとします。これも研究しだすと長くなりそうです。

 

それに加えてもう一つ思いついたことがあり、26飛44角の展開を見越して事前に14歩突いといたら?というアイデアです。つまり44角の局面は図23のようになります。以下36飛32飛46歩35歩26飛36歩27飛37歩成同飛同飛成同桂46歩(図24

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図23:14歩はどうかな?         図24:結果図

図24は後手も満足な局面だと思います。希望を言えば14歩が95歩になってたらもっと嬉しいんですけどね(;・∀・)

図24以下45桂には47歩成53桂不成同角で後手ペースですし、図24から46同銀49飛となるようでは居飛車が苦しい流れでしょう。まぁ、14歩の問題点は居飛車が26飛~36飛以外の筋を選択したときだと思います。14歩が活きる展開はあまり期待できないかと。

 

最後にもう一点、中飛車→四間の作戦の根幹に関わる部分の問題に気付きました。

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図25:66銀の問題

これどうしましょう。58金の一手を保留して、かつ後手の73桂を待たずに66銀を上がられると、どうしても66銀型を通されてしまいそうです。例えば図25から64歩98香73桂68角65歩77銀85桂ならば上のどこかで述べた通り後手有望ですが、しかし98香に代えて68角と先に引き角にされた場合は53銀を強要され穴熊が間に合ってしまいます。作戦の存亡にかかわる問題ですが、解決策は未だ思いつかず。

今回の追記はここらへんで終わりにします。このページももともとは短編のつもりが、5000字超えてきました笑

 

2021/01/09追記

前回の追記の最後で述べた問題について、対応策らしきものを一応思いつきました。

図25から66銀型穴熊に組まれてまずいということでしたが、組ませて戦うアイデアを模索しています。「組ませて戦う」というと真部流が思いつきますがこれもそれに近く、図26のような陣形を考えています。

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図26:6筋位取り

図26以下の一例は24歩同歩同角22飛25歩52金と進んで2筋は受ける方針でいきます。これと似ている真部流の場合は52金のところで55歩同歩56歩79角52飛24歩45歩と進みます(定跡は知らないので違うかもしれませんが)。つまり真部流は2筋は捨てて5筋で優勢を取る方針のようですので、その点でこのアイデアと方向性が異なりますね。まあ図26みたいなのもあるかな・・・と妄想しているだけで、あまり明確な改善策は見えていない現状です。とりあえず思いついた分だけ書き足してみました。

追記は以上です。

 

2021/06/15追記

問題となっている58金省略の66銀には真部流もどきを使わなくとも対処できそうです。

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図27:66銀

後手は53銀ではなく71玉の方を省略して図27。以下64歩68角73桂98香65歩77銀85桂図28

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図28:85桂

穴熊阻止が間に合います。※仮に71玉ではなく53銀の方を保留した場合だと上記手順中68角に53銀を強要されて後手一手遅れてしまいます。

先手が75歩と仕掛ける展開(図29)を見てみます。

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図29:75歩

この場合、後手が図29から65歩74歩85桂と進めてしまうと95角で先手ペースなので、後手は図29から65歩74歩66歩73歩成同銀図30)と指すことになります。

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図30:73銀

若干後手が指しやすいと思います。先手は図30から ①66角 ②66歩 ③58金 が考えられますが、いずれにしても後手は64銀と出ておいて玉頭の制空権を握ることができそうです。

結論としては58金省略からの66銀には71玉保留で対処可能ということになります。

 

2021/11/28 追記

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図31:99玉

冷静に見れば△71玉省略は意味なさそうですね。図31の▲99玉が成立してしまいます。

ここで桂跳ねれると勘違いしていたのですが、図31から△65桂▲95角図32

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図32:95角

王手で先手を取られて逃げられてしまいます。以下△73銀▲66銀などで後手不満でしょう。やはり真部流もどきしかなさそうです。

追記は以上です。