M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

新しい囲い3個 ~金の活用~

既存の囲いは金の活用に関してはかなり保守的な思想に縛られていると思います。

今回は、まだ発案の段階のアイデアたちの中から、金の活用に特徴のあるものを紹介します。

金冠

自分が唯一棋譜並べをした棋士故 森安秀光九段ということもあり、自分の棋風も森安流です。簡単に言うと、金が変な動きするのが好きです。

まず一つ目がこれです。△83金の金冠が目立ちますが、構想の根幹はそれとは少し違うところにあります。コンセプトは2つ❶ノマ中飛車から3枚で囲う❷△43銀の活用です。

まず❶に関しては上図まで左金は△41金→△51金→△61金と移動しています。これは△52飛に邪魔されない移動経路なので、これを活用した有効な囲いを見つければノマ中飛車復活の糸口になる可能性があります。❷は要するに飛車を捌き合った後に△52銀(下図)と引くことを狙っています。

△43銀型は△34歩を守っていて非常に安定した形なのですが、この銀は囲いにくっつけにくいという弱点があります。大山流の無策四間飛車などはこの銀が浮くのが痛いせいでシンプルに飛車を捌き合えないという制約が生じています。そこで上図のように△61金型のまま囲いを進展させておけば△52銀と一手で引き締めることができ、居飛穴と正面から捌き合ってそこそこ良い勝負ができるのでは?と考えました。

さてこの金冠、実は右金なのか左金なのかという話があります。「右金を2回, 左金を2回動かす」「右金据え置き, 左金を4回動かす」の2パターンあって、いずれも手数は変わりません。

どちらかというとツノ銀中飛車を含みにして「右金を2回, 左金を2回動かす」のパターンの方が良いかとも思っていますが、しかし序盤でこう↓なる瞬間があるのであまり褒められたものでもありません。

ここから△72銀と上がったとしても、左金が到着するまで囲いが弱いままとなります。それよりは「右金据え置き, 左金を4回動かす」の方が囲いは安定しています。↓

最後に、このコンセプトを実用化する上での問題は2つです。

  1. △54歩を突くと▲86角が鬱陶しい
  2. ▲57角や▲78飛から▲75歩とされると7筋の厚みが不十分

2つめを踏まえると△73桂は跳ねない方がよいかもしれません。そもそも居飛穴の▲66銀型を阻止できていたわけでもないですし、跳ねるだけ無駄かもしれません。

以上

森安流74金

△74金型はあまり有名ではないですが、故 森安秀光九段が指していた構想です。

棋譜

森安秀光 vs. 加藤一二三 第19期十段戦リーグ

森安秀光 vs. 有吉道夫 棋王戦

小阪昇 vs. 森安秀光 王位戦

森安秀光 vs. 福崎文吾 第23期十段戦予選

△43銀に関しては先ほどの金冠と同じく△52銀を狙っています。また△74金は△85歩をサポートすると同時に84地点もカバーしています。玉頭のスペースを広くとれるため、天守閣美濃のような理屈で居飛穴と互角の捌き合いを目指しています。

△85歩は居飛穴攻略においてとても有効な歩だと個人的には思っていて、一例として上図以下▲78金△54歩▲36歩△94歩▲59角△95歩▲26角△22飛▲37桂△42角▲46歩△33桂▲68銀△24歩▲同歩△同飛▲25歩△21飛▲16歩△25桂▲45歩△37桂成▲同角△28飛成▲同角△52銀▲17角△86歩下図

上図のように△86歩が利きます。上図から▲86同歩△85歩▲同歩△86歩(下図)

くさびを打ち込んだ上図は後手勝ちやすい展開かと思います。この際△74金がいい仕事しているのがわかると思います。

対居飛穴での△85歩の有効性については下記サイトにも言及があります。

w.atwiki.jp

次に序盤についてです。

上図のように△74金と出て、次に△65金と△85金を見せます。先手の考えられる応手は▲66歩・▲86歩・▲55歩(26飛狙い)です。▲66歩なら本譜のように△85歩と伸ばして一局。▲86歩については上図から▲86歩△84歩▲78銀△85歩▲87銀△86歩(下図)

どう応じても形が乱れて後手は△74金をやった甲斐があります。先手の最善は△85歩に対し▲同歩△同金▲87銀△86歩▲同角でしょうか。金歩vs角の交換になり駒割は互角ですが、後手の金歩には長手数が費やされていたので先手良しだと思います。

追記2022/8/27
改良案として△72玉型で同じ順に進むのがあります。下図左から▲86歩△84歩▲78銀△85歩▲同歩△同金▲87銀△86歩▲同角△同金▲同銀△63玉(下図右)
 
上図以下は△82飛▲87歩△52金(※▲31金に△42金の用意)から最終的に下図のように組んで後手も十分戦えると思います。

後手は歩が欠けた8筋に飛車を持ってくることによって先手玉頭に飛車の利きを直射させることができます。△63玉型は防御面では薄いのですが、先手の2,3筋方面からの攻め対して浮いて避ける格好です。上図から▲58飛には△53銀や△43銀で大丈夫です。

次に▲55歩に関してはここから▲55歩△65金▲26飛△45歩▲78金△46歩▲同銀△76金(下図)

これはやや後手持ちの形勢かと思います。とりあえず簡単な検討ですが、総合的には△74金はかなり可能性のある指し方だということになります。

73金型の囲い

  

個人的には「実は△73金△72金型ってかなり堅いんじゃないか」ということを考えています。例えば上右図(小)は適当に作った局面ですが、実戦で銀冠から△73金寄と指して上手くいくケースは体感としては多く感じます。金二枚の連結が良いのと、△63金よりも△73金の方が当たりが弱いのがメリットです。

△71銀の使い方としては、金二枚が既に堅いので△62銀から53などに自由に使っていくのもアリです。またはあくまで囲いを強化するなら下図のような囲いも有力だと思います。

類似形のない囲いですが棋理には沿っていると思います。守備の要は金なので、囲いを攻める手段としては下段から銀を相手金にひっかけて移動を迫る指し方が一般的です。銀冠だと△61銀とひっかけられるのが非常に鬱陶しいです。その点、上図の囲いでは二枚の金が事前に避けてあり、その心配はありません。ここで一般的には金がうわずると下段攻めがキツイのですが、端玉にしたことで△81桂が下段を埋めてカバーできています。▲21龍▲45角のラインさえ警戒していれば、それ以外は弱点の少ない囲いだと思います。いざというときの△75歩▲同歩△71歩の底歩も堅そうです。

 

以上となります。

実用化までは少し遠いですが、ポテンシャルを秘めている囲いたちだと思います。