M氏の将棋

序盤戦術と自戦記書くよ(`・ω・´)

凧金(きmきm金)

今回は凧金、きmきm金について考察しようと思います。

 

まず余談です。タイトルには「凧金」と書きましたが、この戦法の正式名称はおそらく「きmきm金」の方です。しかしきmきm金だとその名前から2000年のネット掲示板やコメントが右から左に高速で流れていくやつな感じがむんむん・・・

個人的に微妙なので、できれば伝統の「凧金」で呼びたい気もします(>_<) あそこら辺のネット文化って、もう若者の文化じゃなくて僕らの親世代の文化だと思うんですよね。 ああいうくだけたトーンのコンテンツは新しいからウケるし面白いわけで、ところが生まれたころから既にそれがあった僕の世代からすれば、前世代が残したタダの黒歴史・・・と言うのはさすがに言い過ぎですか笑 (;´・ω・) ←でもこれはわりと好きです。かわいい。

 

閑話休題

きmきm金、もとい凧金は54金型向飛車と同じく4手目32金(図1)から始まります。先手は図1から2つの選択肢 ①68飛~78飛 ②66歩~78飛 がありますが、実戦では②66歩~78飛が圧倒的に多いです。図1から66歩33金78飛44金図2

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図1:32金     図2:44金

33金→44金→54金と回して出すのが凧金の特徴です。一方で54金型向かい飛車は43金→54金。したがって将来44歩~45歩を突く前提の下では、54金型向飛車の方が一手早い計算になります。しかし凧金の場合は44金を経由することを活かして図2から48玉33角38銀22飛36歩35歩(図3)ができるというメリットがあります。

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図3:35歩

44金型からの35歩があるので先手の平矢倉を牽制できます。またはここで35歩と仕掛けなくても、図4のタイミングで35歩同歩同金36歩26歩同歩同金同銀同飛27金24飛26歩84飛図5)があり、実戦ではここまですんなり進まないにしても、後手の44金型に先手が平矢倉に組む将棋は、全体的に後手にとって不満がない思います。

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図4:35歩    図5:84飛

逆に凧金が不得意とする展開としては、先手が平べったく構えた場合や、46歩を突かれる場合が挙げられると思います。例えば先手が金無双に組んだ局面(図6)を見てみます。

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図6:先手金無双    参考図7:54角の攻め

図6となっては後手の44金型のメリットはあまりないでしょう。後手にとって都合の良い流れとしては図6から35金65歩88角成同飛33桂67銀54角参考図7)が考えられますが、実際問題先手は普通66歩は開けないですから実戦で参考図7に至ることはないでしょう。

さて本題の後手にとって気がかりな展開は

図6から62玉58金72銀67銀42銀46歩71玉47金図8

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図8:47金

先手に4筋を起点に手厚く構えられると44金が窮屈になる心配があります。後手がこの展開を嫌うなら、早めに54金~44歩~45歩と4筋を確保する手はあります。本来の54金型向飛車と比べて純粋な一手損となるのでモヤモヤしますが、一局の将棋でしょう。

 

ところで図8の局面は僕としては先手ペースだろうと思っていたのですが、ソフトは図8の局面を後手やれると見ているようです。後手は35歩とスペースを確保したのち2筋交換の後24飛~34金で端攻め、または54金で先手の左辺を牽制するのが良いとおっしゃる。またソフト氏曰く、この形では51銀~62銀が良いらしいです。

 

意外と人間的にも図8では後手を持ちたい人は多いかもしれませんね。金上がりの形は嫌う人が多いですが、堅く囲って軽く捌きたい人は現代振り飛車党に多い印象です。ぼく個人的には抑え込む将棋が好きなので先手を持ってみたい気がします。ここら辺は好みの問題なのでしょうか。

 

今回の考察をもとに判断すると、何かあれば一手損して54金型向飛車に合流できる分だけ、54金型向飛車よりも凧金の方が選択肢が広いということがわかりました。54金型向飛車そのもの優秀なら54金型向飛車だけで良いのですが、現状では54金型向飛車は平矢倉に対する方針が立っていません。なので序盤は凧金で平矢倉を牽制したのちに一手損で54金型向飛車に合流するのが最善なのかな~と思っています。

 

おわり