54金型は奇抜な形だけに問題点も少なからずあるだろうとは予想していました。ここらで一度、実戦で露見した54金型向飛車の抱える問題点について整理しておく必要がありそうです。今回は三間飛車側の平矢倉について軽く検討します。
46歩をめぐる問題
先手が平矢倉にするなら図2あたりが妥当だと思います。この局面以降について考えてみます。
図2で後手が45歩を優先しているのは先手の矢倉を消すためです。43金型では矢倉崩しに自信がないので、先手に46歩と突かれる前に4筋の位を確保しておきたいところです。ただし、4筋の位を確保するとは言っても図2以下24歩67銀25歩56銀54金(図3)46歩同歩同銀26歩同歩同飛27歩22飛(図4)という手段は先手の権利です。図4では3,4筋のコントロールを先手が握っている格好です。また将来の58金~47金が手厚すぎるので先手十分の局面だと思います。一応後手としても43銀の応援がありますし2筋の歩を持てているので最低限の勝負はできそう、という感じですね。
ちなみに後手45歩を突かず、先手に矢倉を許した場合は図5のようになります。ソフトは図5から45歩同歩55歩同銀45桂48銀82玉65歩26歩同歩33角44歩同銀・・・で評価値0付近と言っています。ただ人間的にはかなり先手持ちの形勢だと思います。
75飛の問題
先手の平矢倉から自然に進んで図6が問題の局面です。
次の45銀を止めるすべはないので、後手としては45銀に74歩で飛車を攻める方針で対応するしかありません。しかし図6から62金45銀74歩同飛は王手になるので以下73銀75飛となって結局45銀の攻めが通ってしまいます。そのため、74飛が王手にならないように62玉で待機しておくのは一つの手段です(図7)
図7から45銀には74歩85飛73桂95飛94歩と追って後手優勢です。図7の52金は大事な手で、52金に代えて94歩とかだと45銀74歩54銀75歩43銀成があります。一応この場合なら78飛(図8)があるので後手も勝負できるかもしれませんが、例えば69金28玉の形では43銀となると先手勝勢(図9)なので、後手の43銀と52金はセットで指しておく必要がありそうです。
75飛45銀の筋はこれでなんとか対処できるかと思います。
62玉&52金の問題点
序盤の46歩同歩同銀の手順については冒頭でも触れましたが、75飛まで進んだ図7から46歩同歩同銀26歩同歩同飛27歩22飛47金(図10) 残念ながらこれは割と明確に先手良しだと思います。先手75飛が活き、後手62玉が響きそうです。まぁ4筋は後手も手厚いのですぐに後手が悪くなることはありませんが、後手から能動的に動いていく筋がないので長期的に見ると先手が楽しい展開でしょう。
囲いの見直し
ここまで82銀の金無双を前提にした議論をしていたのですが、前述の図10や、それに加えて図11の48飛もあることを考えると、囲いを見直す必要がありそうです。
候補としては金美濃(図12)や美濃(図13)が挙げられます。
これなら玉が深いので46歩同歩同銀の時にも2,3,4筋でアグレッシブに強く戦えそうです。また45銀74歩同飛が王手になりません。さらに7筋の歩を埋めずに保持しておきやすいのも大きなポイント。ただし図12や図13では43銀と上がってみたいのですが、紐が付いていないので勇気が要ります(前述の45銀74歩54銀の筋)。
また端歩は受けるかどうか迷いますが、僕は受ける方が好きです。基本は待ちの姿勢なので、端を詰められると77桂~85桂~93桂が一方的に刺さってしまいます。ただし端を受けた場合は、それはそれで77角~95歩の心配要素はありますが。
まとめ
ここまで先手の動きへの対策という方向性で考えてきましたが、「後手から攻める手段はあるのか」についても考えてみたいところです。
と書いて探してみましたが、あまりハッキリした攻めの方針は思いつきませんでした。強いて挙げると44角~33桂~35歩で一歩持ってどうこうするという感じになるかと思います。
今回は54金型向飛車 vs 平矢倉について軽く検討してみました。とりあえず今回の結論としては、後手が潰される危険のある変化は見当たらなかったものの、後手を持って主張できる点もなし。54金が銀であったらな・・・と思うことも何度か(笑) 対平矢倉では ①2筋の歩を持てない ②4筋の位を脅かされる この2点が54金型向飛車の問題点です。
おしまい